セピア色の世界 事の発端は些細なけんかだった。
不意に袖があたり魏嬰が大切にしていた辛味の調味料をひっくり返してしまった。床に広がったその赤い粉は元々入っていた器のほとんどであったようで、一面が砂が撒かれたようになってしまった。
「わぁ、……お前にしては派手にやったな」
「すまぬ」
「別に腐るもんじゃないし、拾って食べれば大丈夫だ」
「いや魏嬰、新しいものを買おう」
魏嬰に腹を壊されると困ると落ちたものを全て処分してしまった……そして怒られた。
***
「含光君がこんなにものを大切にしないやつだったとは知らなかった」
怒った彼は縁側に座りながら、こちらを見ようともしてくれない。
「別に部屋の中だったしお前がいつも綺麗に掃除してくれているんだから汚くなんてないだろ。残念ながら俺もこの体の莫玄羽だって碌な生き方してないからお前より胃腸が弱いとかは、ない」
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