平和的解決「ねぇねぇ望ちゃん。新作のゴマ団子があるんだけど一緒に食べない?」
普賢の誘いはいつも魅力的だ。付き合いが長い、言うなれば腐れ縁だが、おかげでわしの好物をよく理解している。
「それ、ちゃんと食えるやつか?」
「酷いな。僕のこと疑うんだ」
わかりやすく落ち込んで見せるところも、まったくわしのことをわかりすぎている!!
「ええい、そんな顔をするでない!! 」
「じゃあ食べてくれるよね」
「仕方ないのう……」
やれやれ、とため息をついているところに今度は別の声で名を呼ばれた。
「太公望師叔、こんなところにいたんですね。美味しそうな桃が届きましたよ」
「桃!?」
わしはゴマ団子もすきだが桃はその上を行く大好物。本能というどうしようもない効力で振り返ってしまった。
振り返った先の楊戩は驚いた顔をしたあとわしを見て目を細める。美形の微笑みとは、なんとも眩しい。
「はい。受け取った箱はとても重かったので、良いものかと思います。食べますか?」
「食べる食べる食べる! 食べるに決まっておろう!!」
「えー。僕とゴマ団子食べるんじゃなかったの?」
「うおっ!?」
ぐいっと左腕を掴まれ引っ張られた。腕が抜けるかと思った! 普賢のやつ、細身だからって力加減わかっとらんところがある……。
「ゴマ団子は日持ちしますよね? 桃は鮮度が命です。師叔も一番美味しい時に食べたいでしょう?」
「わぁっ!?」
楊戩の手が自然にわしの手を取る。こういうとこ、あまりにスマートすぎんか!? 美形とは皆こういうものだろうか、恐るべし。
「こういう時は先にした約束を守るものだよ」
「お言葉ながら、例外的優先順位はあると思います」
右半身と左半身、それぞれをぐいぐいと引っ張るものだからわしの体はこのままでは分裂してしまう! いや、分裂したらかなり便利かも?
……などと考えてる間に本当に体が真っ二つになりそうなので、ここは一つ! 厳粛に!!
「三人で食べれば良いのではないか?」
平和的解決を提示したわし。
を、二人は冷たい目で見る。視線だけで、人を氷漬けにするような。そんな目が出来るなら宝貝など不要なのでは?
「望ちゃんってデリカシーないって思わない? 楊戩」
「まったく同感です。良ければ普賢師弟、僕とお茶でもどうですか。美味しい桃がありますので」
「いいね。ゴマ団子も食べよう」
「なっ、わしは!?」
追いすがろうにも、先程の視線を思い出すと手が止まる。そうこうしてる間に、取り残されて。
「いや、何……?」