(音トキ)優しくできない優しくできない
「えーと、ごめんね?」
頭まで被っていた毛布をやっと上げてくれて顔が見えたけど、眼光鋭く睨みつけられる。……まあ、その目もまだ腫れぼったいから全然怖くわないんだけど。
と、思ってることが顔に出てしまってたのか、何か怒声をぶつけようと口を開いたところすぐに咳き込む。
こちらもまあ、……俺のせいなので。持ってきた水を素早く差し出すのだった。
「最悪です」
まだ掠れた声で重々しく吐かれる。
「どうしてあなたはいつも限度というものを知らないんですか。嫌だと言ってもきかないし、やめろと言っても止めないし。人のことをなんだと思ってるんですか」
「だって。……。……」
「なんですか。その妙な沈黙は」
「いや、これ言うとまた泣くかなって」
「誰が! いつ! 泣きましたか!!」
そうやってがなるから喉からすんじゃん、と胸の奥で唱えながら口では「落ち着いて」と諭す。
「じゃあ言うけど」
そう、昨夜は。たしかに最初に誘ったのは俺だけど。
「嫌って言ってきいたら睨むし、やめろって言われてやめたら不機嫌になるし、そのことを知ってるくらいにはトキヤのこと好きだよ」
「……な」
「でも声我慢できなくなるくらいしちゃったのは悪かったと思ってるよ。いくらトキヤがちょっとわがままだからっていじわるしちゃうのはよくなかったよ。……でも」
気持ちよかったんでしょ。
「ほ、ほんとに、あなたは、なんなんですか。う。も、もう、きら」
「あーごめんごめんごめん!」
俺が大人気ないのも悪いけど、最中の半分くらい素直でいてくれればいいのに、と思ってしまうのはダメなのかなー?