旅人に頼られて頑張るトーマがお昼に弁当を食べる話 はたきを片手に持って鴨居に溜まった埃を落としていると、後ろを通った女中から旅人が訪問していると言われた。トーマは驚きつつも出迎えに向かうと目が合った旅人とパイモンが笑顔で手を振ってくれた。
「旅人にパイモンじゃないか! 急にやって来るなんてどうしたんだ?」
「よぉ、トーマ! 城下町の用事のついでにコッチにも遊びに来たんだ!」
そう言って手土産として今流行りの団子牛乳を受け取った。
あの将軍様が何度も飲むほどの美味しさ、との評判で城下町で皆がよく飲んでいる甘味だ。若も流行る前に持ち帰ってくれて飲んでみたが、評判と違ってエグ味と甘さが舌の上で殴りあっているかのような、モチモチとするはずなのにシャリシャリという食感もあって良しと言えない味で泣きたくなった。気分が落ち込んだが、綾人が嬉しそうに微笑んで、その店では客が自分好みの味に組み合わせることが出来るらしく、若もやってみたと。綾華とトーマにいい手土産ができたと嬉しそうに言うものだから、トーマはその場で残りを一気に飲み干して引き攣る口角を上げご馳走様でしたと礼を言い、そそくさと仕事へと戻った。
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