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    橘/たちばな🐕柴犬のシッポ

    一次創作を手掛けている犬好きの絵描きです。
    ついった:https://twitter.com/tcbnaba_s57

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    POIPOI 78

    pixivファンタジアAOS関連のアフターストーリーのクロスオーバー。PFAOS参加組とあの道化師との戦い。
    戦闘描写にてグロいダメージ表現が含まれるので一応閲覧にご注意。

    ##PF参加組関連

    pixivファンタジアAOSフューチャーストーリー「悪魔の道化師」「はああああッ!」
    黒髪の少女が激しく剣を振りかざす。鎧に身を包んだ女騎士はその一撃を軽く受け止め、反撃の一閃を放つ。少女は間髪で攻撃を遮り、応戦していく。攻防が繰り返される中、僅かな隙を突かれた少女は女騎士の剣の一撃を受ける。
    「がはあぁっ!」
    鮮血が舞う中、少女は吐き出すように叫びながら傷を負い、膝を着いた。
    「まだ甘いな。僅かな隙が命取りになる」
    女騎士が剣を収める。
    「恐れ入りました。流石はエル様……容赦ないこの一撃、身に染みます」
    剣による特訓を行っていた少女と女騎士――――少女はジャバリア騎士団の新参騎士ルベラで、女騎士はジャバリアの騎士団長エルノイラであった。ルベラは傷口からの出血を抑えながらも立ち上がるが、傷の痛みに思わず息を荒らげてしまう。口からも血を流していた。
    「その程度で屈するならば戦地に立つ資格は無い。戦いは常に痛みと合わせて血を流すものだ」
    エルノイラがルベラに近づくと、ルベラに顔を寄せる。
    「そう息を荒らげるな。騎士の端くれなら痛みを堪えろ」
    「す、すみません!」
    顔を近付けた状態で厳しい言葉を投げかけるエルノイラはルベラの頬に軽く触れ、近い距離のままルベラの目を凝視する。
    「あ、あの……エル様?」
    「ふむ、目は本物のようだ。お前の目からは戦う意思を感じる」
    眼前で見つめながらも喋りかけるエルノイラに、思わず照れてしまうルベラ。
    「忘れるな。どれ程傷付いても戦う意思を失わぬ事を」
    顔を近付けたまま更に言葉を続けるエルノイラ。息と汗の臭いを感じても不快に思う事なく照れるばかりのルベラは何も言えなくなってしまい、硬直していた。

    数日後、兵士から不吉な知らせを聞かされたエルノイラは部下に招集を掛ける。ザハラバードが魔物の襲撃に遭ったという一報であった。
    「ザハラバードへ向かうぞ。決して油断はするな」
    ジャバリア騎士団長として部下を統率し、ザハラバードへ出陣するべく馬に跨るエルノイラ。部下となる騎士の中にはルベラの姿もある。馬に乗ったジャバリア騎士団はザハラバードに向かっていく。

    魔物の襲撃に遭ったザハラバードは荒れ果てていた。幾多の建物は破壊され、炎が燃え上がっている。
    「何故魔物が……」
    エルノイラは表情を強ばらせる。
    「なんて酷い……魔物め、許せない!」
    ルベラが剣を構えると、魔物が次々と襲い掛かる。
    「小癪な!」
    即座に剣を抜いたエルノイラが一瞬で魔物の群れを切り裂いていく。だが、多くの魔物は更に襲い掛かる。
    「たあああっ!」
    ルベラは剣技を駆使して魔物を倒していくと、騎士団の騎士達も魔物に挑んでいく。
    「これではキリがない。お前達はザコを食い止めろ。私は魔物を放った親玉を探す」
    魔物の襲撃に親玉がいると考えたエルノイラは親玉を探しに向かおうとする。
    「エル様、それなら私も行きます!」
    そう言ったのはルベラであった。
    「どういうつもりだ」
    「エル様といえど、敵の正体は得体が知れない以上、お一人では危ないかもしれません。私は決して足手まといになりませんから」
    ルベラの真剣な眼差しにエルノイラは一瞬表情を険しくさせるが、軽く息を吐く。
    「好きにしろ。足を引っ張る事だけはしてくれるな」
    「はい!」
    力強く返事をすると、ルベラはエルノイラと共に街中へ向かった。街中も無数の魔物が牙を剥き、次々と襲い掛かる。
    「旋風斬り!」
    ルベラが周囲の魔物を退けると、巨大なハンマーを持つ筋肉質の魔物がエルノイラの前に立ち塞がる。
    「貴様は親玉ではないな」
    エルノイラは魔物が振り下ろすハンマーを避け、攻撃後の隙を突いて魔物の顔に回し蹴りを食らわせる。
    「はあっ!」
    蹴りを受けた魔物が怯んだ瞬間、エルノイラは剣を両手に持ち、十字状に大きく切り裂いた。
    「凄い……流石エル様ですね! 大きな魔物を容易く仕留めるなんて!」
    エルノイラの実力を改めて思い知ったルベラはただ驚くばかりであった。
    「奴が親玉ではない。無駄口を叩いてる暇があらば足を動かせ」
    「は、はい!」
    エルノイラの厳しい一言にルベラは気を引き締めて再び動く。魔物を蹴散らしながらも親玉を探す二人の前に翼を広げた黒いドラゴンが現れる。
    「馬鹿な……ドラゴンだと?」
    エルノイラが思わず身構えると、ドラゴンは激しい炎を吐く。
    「くっ……!」
    盾を構え、炎を凌ごうとするエルノイラ。
    「エル様!」
    加勢しようとするルベラだが、炎の勢いで近付く事が出来ない状態であった。ドラゴンが翼を勢いよく羽ばたかせると、炎と共に強烈な風圧が襲い掛かる。
    「うあっ……!」
    「きゃああ!」
    吹っ飛ばされるエルノイラとルベラ。ドラゴンは雄叫びを轟かせ、辺りに炎を吐き続ける。
    「チッ……今すぐ奴を仕留めなければ」
    エルノイラの鎧の中の胸元が光り始める。懐に忍ばせた星光石による力を呼び起こし、光の魔力を起こそうとしているのだ。
    「出来ればこの力は使いたくなかったが、やむを得ん……」
    エルノイラが立ち上がり、剣を構えた瞬間、剣先が雷に覆われていく。そして稲妻が迸る魔力の光に包まれるエルノイラ。
    「エ、エル様……?」
    エルノイラの変化に驚くルベラ。エルノイラが星光石で秘められた魔力を呼び起こしたのは数年ぶりで、ルベラはエルノイラの光の魔力については全く知らなかったのだ。
    「はああっ!」
    光の雷に覆われた剣を振り翳すエルノイラ。炎のブレスを遮りながらもドラゴンの両足を切り落とし、首部分に剣を突き立てる。
    「グオオオオオオッ!」
    雷光を流し込まれたドラゴンは断末魔の叫びを轟かせながらも息絶える。エルノイラは倒れたドラゴンの前に降り立ち、稲妻を帯びた剣を収める。
    「エル様……凄いです! そのような力があるなんて!」
    ルベラが尊敬の眼差しで歓喜する。
    「この力は亡き戦友から譲り受けたものだ。無闇に使うものでは無い」
    エルノイラは振り返らず冷静な声で返答する。
    「奴は魔物の親玉ではない。行くぞ」
    「はい!」
    エルノイラとルベラは引き続き街中の魔物に戦いを挑む。
    「やああっ!」
    ルベラは様々な剣技で魔物を切り裂いていく。
    「はあっ!」
    エルノイラが一閃を繰り出すと、数体の巨漢の魔物が一刀両断される。
    「親玉はどこにいる……」
    呟くエルノイラに空から襲い掛かる魔物の群れ。エルノイラは即座に剣を振り上げ、斬撃による衝撃波で数体の魔物を真っ二つにしていく。
    「ほほう……なかなか骨のある奴らがいるようだな」
    突然の声に身構えるエルノイラとルベラ。現れたのは、小柄かつ細身の体躯を持つ道化師風の男であった。
    「何者だ!」
    「貴様らが探している親玉だよ。この街に魔物を放ったのはこのオレだ」
    道化師は不敵に笑っている。
    「貴様が親玉なのか。何が目的でザハラバードを狙う!」
    エルノイラが剣を構えて問う。
    「余興のつもりだ。我が計画の合間に余興を楽しむのも悪くないと思ってな」
    「何だと? ふざけるな! 貴様の好きにはさせんぞ!」
    身構えるエルノイラとルベラ。
    「このオレと戦うつもりか? いいだろう。少し相手をしてやる」
    余裕に満ちた態度で道化師が言い放つ。
    「私達を甘く見ると痛い目に遭うわよ!」
    ルベラが剣を突き付けて言う。
    「クックック……知らぬというのは幸せだな。少しは覚悟を決めた方がいいぞ」
    「何?」
    「……ガアアッ!」
    道化師が吼えると、一瞬で凄まじい邪気に覆われ始める。驚くエルノイラとルベラが見たものは、禍々しくも強大な力が漂う闇のオーラに包まれた道化師の姿であった。
    「貴様らの努力に敬意を評して、全力の75パーセントの力で戦ってやろう」
    エルノイラとルベラは凄まじい邪気に戦慄を覚えた瞬間、道化師はエルノイラの前に瞬間移動する。
    「くっ!」
    振り下ろした剣は空を斬り、振り返ると道化師が嘲笑うように立っている。
    「かああっ!」
    星光石の力で光の雷を身に包み、道化師に斬り掛かるエルノイラ。だが攻撃は当たらず、回避に専念するばかりの道化師にエルノイラは得体の知れない不気味さを感じ取る。その瞬間、僅かに生じた隙を突いた道化師が闇のオーラを纏った拳の一撃をエルノイラの腹に深くめり込ませる。
    「ぐぼぅおぉっ……!」
    腹部を守っていた鎧部分は砕かれ、腹にめり込んだ瞬間、メキメキと骨が折れる音が聞こえてくる。道化師の攻撃を受けたエルノイラは大きく吹っ飛ばされ、背後の壁にめり込む形で叩き付けられる。
    「う……ぐっ……がはっ! がっ……げぼおぉっ……ごぁっ……」
    嘔吐するかの如く大量に血反吐を吐くエルノイラ。吐血の量は大きな血溜まりになる。アバラを数本砕かれ、内臓にも多大なダメージを受けていたのだ。
    「エ、エル様ぁっ!」
    エルノイラの元に駆け寄ろうとするルベラだが、道化師が立ち塞がる。
    「がぁっ!」
    道化師は拳をルベラの顔面に叩きつける。血を吹くルベラの身体は町に立てられた石像を破壊する勢いで吹っ飛ばされていた。
    「がっ……がはっ! うっ、うう……」
    ルベラは口から血を垂らしながら喘いでいた。
    「他愛のない。もう少し加減すれば良かったか?」
    道化師が笑う。
    「ル、ベラ……うっ、ごぼっ……!」
    更に血を吐いたエルノイラは、自身が吐いた血反吐の溜まりに顔を打ち付けて倒れてしまう。
    「な、なんて重い一撃なの……エル様までたったの一撃であれだけの血ヘドを吐くダメージを……」
    ルベラは殴られた顔を抑えながら立ち上がるものの、口からの血は止まらず、ふらつきながらも口に溜まる血を吐き出す。
    「どうした?もっと楽しませてほしいのだがな」
    道化師は乱暴にルベラの頭を掴み、拳を腹にめり込ませる。
    「ぐぼはっ」
    大量の血を吐くルベラ。腹に深くめり込んだ拳が抜かれ、掴まれていた頭が離されると、顎に一撃を叩き込んだ。
    「げぼぉっ!」
    ルベラは血を吹きながら頭を大きく仰け反らせ、何度もバウンドしながら倒れる。
    「グ……ごぁっ……」
    口を開けたまま生暖かく血生臭い匂いがする息を吐きながら苦しみ喘ぐルベラ。口からの出血はまだ止まらない。
    「おのれ……負ける訳には……」
    血塗れの顔で立ち上がるエルノイラ。
    「くくく、そうだ。もっと足掻け。でないとつまらん」
    笑う道化師に、エルノイラは口から血を垂らしつつも剣を構える。血は顎から滴り落ちていた。
    「貴様のような化け物は刺し違えてでも倒す」
    滴り落ちる口からの血を拳で拭い、ペッと口内の血を吐き捨て、剣を掲げる。星光石の力によって目覚める魔力と共に迸る光の雷。
    「ほほう、まだそんな力が残されていたか」
    動じない道化師に集中し、エルノイラは凄まじい気迫で斬り掛かる。
    「がああっ!」
    雷の斬撃が道化師を襲う。更に次々と斬りつけていき、上空に飛び上がっては大きく振り下ろす。
    「はあああああっ!」
    剣は雷光の刃と化し、周囲に稲妻が走る程の衝撃を伴う斬撃が繰り出されると、全てを薙ぎ払うように雷の嵐が荒れ狂う。
    「す、凄い……これがエル様の真の力……」
    倒れたままのルベラはエルノイラの力にひたすら驚いていた。雷が消え、光が収まると、道化師の姿は消えていた。
    「ハァ……ハァッ……やったのか……うっ、ぐぼっ」
    エルノイラは血を吐きながら剣を地面に突き立て、痛む身体を支える。
    「エル……様……!」
    顎を抑えながら立ち上がるルベラ。抑えている手は口からの血で赤く染まってしまう。ルベラはフラフラとしながらもエルノイラの元に辿り着く。
    「……大丈夫か」
    エルノイラが声を掛ける。
    「は、はい……勝ったのですか?」
    弱々しく返事するルベラ。
    「奴がどうなったのかまではわからん。それより、顎は砕かれていないか」
    顎を手で抑えているルベラを見て問うエルノイラ。
    「はい……血ヘドは吐きましたが……」
    「血ヘドを吐いたのは私も同じだ。これだけ血を吐いたのも久しぶりだ」
    ルベラはエルノイラが吐いた血の溜まりを見る。血は赤黒く、命に関わる量の吐血であった。
    「エル様……あんなに血を吐いて本当に大丈夫ですか?私だって人の事言えないかもしれませんが」
    「これくらいの血を吐く事など過去に何度か経験している。骨を砕かれる事もな……ぐっ!」
    激痛が走り、膝を付くエルノイラ。
    「エル様!」
    「……アバラを数本やられてしまった。だが、私の事は……」
    エルノイラを支えようとするルベラ。だが次の瞬間、エルノイラは邪気を感じる。
    「クックックッ……良いな。実に良い。このオレを少し震撼させるとはな」
    黒い霧と共に現れる道化師の姿。
    「き、貴様……まだ!」
    エルノイラとルベラは満身創痍ながら戦闘態勢を取ろうとする。
    「フハハハ、貴様らもとうに理解しているのではないか?戦う力が残されていない事をな」
    「何だとッ……!」
    道化師は不気味に笑うばかり。
    「貴様らをこの場で始末するのは惜しい。今日はこの辺で幕引きにしてやる。なかなか面白い底力だったよ」
    そう言い残し、道化師は去ろうとする。
    「貴様、逃げるつもりか!」
    エルノイラが道化師に向かって怒鳴りつけるが、道化師は鋭い目を向ける。
    「勝ち目がないと理解した上で死に急ぎたいのか?騎士の女よ」
    「うっ……」
    エルノイラは思わず立ち尽くしてしまう。
    「くくく……そう慌てる事もあるまい。オレは今からやるべき事があるのでね。仕事が終わり次第また貴様らと遊んでやる。再びオレと会う時が来るまで死に物狂いで鍛えておくんだな」
    宙に浮いた道化師の姿が薄れ始める。
    「オレの名はケセル。冥神の力の化身と言っておこう」
    道化師――――ケセルは邪悪な笑みを浮かべつつ姿を消した。
    「ケセル……冥神の力の化身だと……?」
    エルノイラは未知なる敵の存在に戦慄を覚える。
    「エル様、冥神って何なのですか?」
    ルベラが問うものの、エルノイラには答えが見つからなかった。
    「……一先ず戻るぞ。敵はもういない」
    「は、はい」
    エルノイラとルベラは血塗れでズタボロの身体を引き摺りながらもその場を後にした。

    翌日――――アバラを数本砕かれ、内臓にも損傷があると診断されたエルノイラは療養に専念し、ルベラは痛む身体を支えながら訓練に励もうとする。
    「エル様が休まれている間、この痛みに耐えながら鍛えなきゃ……!」
    恐るべき敵の存在を知ったルベラは痛みをものとせず、厳しい訓練に挑んでいた。
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