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    mowmowsoltoukan

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    mowmowsoltoukan

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    独自設定の残骸あり
    提督の名前は白蝶、審神者の名前は羽鳥です

    #刀艦乱舞
    bladeDance

    長谷部と赤城の温泉ネタへし切長谷部と赤城が婚姻を交わしてから早くも一ヶ月が経った。互いの指に(長谷部は手袋の下ではあるが)指輪が増えたとはいえ、その生活はあまりにも変わらなかった。
    何せ、長谷部の所属する羽鳥隊本丸は離島、赤城の所属する白蝶艦隊は本土に構えている。刀剣男士には基本的に海を渡る手段はない。赤城が本丸へ出向かねば、二人は会う事も叶わないのである。しかし。
    「長谷部、いい加減意地張ってないで電報打って貰ったらどうだい? 逢いたいって」
    茶をすすりつつ、燭台切りが切り出すと。
    「だ、誰が誰に! 逢いたいなど!」
    依然としてこの調子である。
    本人たちだけでは収まらず、黒田組や正規空母たちまでも巻き込んでようやく結婚に至ったものの、相変わらず長谷部は頑なな態度を取り続けていた。
    赤城の方も以前と同じで、全く読めない。時折遠征で本丸へ顔を出したとしても、何食わぬ顔で御手杵並の食事を摂り帰ってしまう。余程運に恵まれないのか、長谷部も長谷部で任務に赴いており顔を合わせることができない。
    そもそも互いに約束して機会を作ればいいことではあるが。
    「失礼します」
    ひょこり、と前田が姿を現す。今日の近衛である。
    「主様が長谷部さんをお呼びです、天守に……って、もう行ってしまわれました」
    こんなところも変わらない。燭台切は苦笑しながら残っているお茶を啜った。

    「主、今、なんと」
    「だから、長谷部に暇を出すと」
    あからさまに白くなった長谷部を見て、羽鳥は慌てて付け足した。
    「待て、だいぶ語弊があった。正しくは一週間の暇だ。ただの長めの休みだよ」
    「このへし切長谷部に、何か問題が?」
    「あるといえばある。いや、誤解するな、仕事ぶりだとか体調だとか、そういったことではないよ」
    「では、何故です」
    「新婚旅行さ」
    そう口にした瞬間、それまでの震慄は止まり、今度はポカンと目と口を開いた。

    それからはあっという間だった。
    内番や管理などの引継ぎ、数日分の着替えや荷物の準備などをして、その翌日には本土行きの船の前である。
    「長谷部さん、お久しぶりです」
    旗艦であるらしい枯草色の髪の娘、ーー確か朧と言ったかーーが礼をしてきたので、返してやる。彼女だけ、わざわざ脚部の艤装を外して地上へ登ってきたらしい。律儀なことである。
    定期船にはいつも、駆逐艦が護衛として付く。桟橋から目を向けると、海上から桃色の髪の娘や金の髪の娘が長谷部を見てニヤニヤとしていた。新婚旅行だということを聞いているのであろう。鬱陶しくて仕方がない。
    「赤城は」
    「本土で待っています」
    きゃあきゃあと言い合っている他の艦娘の視線に気づいたのか、朧は少し申し訳なさそうな顔をした。
    「うるさくしてごめんなさい。ええと、赤城さんのお相手がどんな方か、知らなかった子達も多くて……」
    「いや、いい。気にしてはいない」
    思えば赤城が本丸に来た時も、短刀たちはこんな風に騒いでいた。この程度で睨むなど、大人気ない振る舞いだろう。

    本土にたどり着いたのは、日が真上を少し過ぎた頃だった。箱庭のようになっていた離島本丸と違い、灰色の地面や鉄の建物がいくつも連なっている。

    バス停の誰も座っていないベンチの横に、背をまっすぐにした黒髪の女が立っている。あと七歩、といったところで赤城は振り向いた。
    「お久しぶりですね、長谷部さん」
    白いスカートが風を受けてはらりと揺れる。胴着も艤装も身につけていないのに、その佇まいはなんら変わりなく見えた。
    「顔色は悪くないですね。安心しました」
    「……赤城も、変わりはないか?」
    「ええ」
    以前と同じ、微かな笑みを浮かべている。
    何を言おうか考えていると、エンジンの音が背後から聞こえて来る。
    「バス、来ましたね」

    バスに乗って終点の駅まで。人の多さに戸惑う長谷部を赤城が促し切符を買い、電車でおよそ一時間。小さな駅からまたバスに乗る。鎮守府前から乗ったものよりも年季が入っていた。乗客は赤城と長谷部の二人だけのようだ。始めに乗った方は既に席が埋まっており、柱に掴まって立っているばかりであったが、今度は赤城に倣って席に座った。二人、前後の席に並ぶ。自分の隣に荷物を置いた。
    任務以外では本丸から滅多に出ることのなかった長谷部にとってほんの短い時間だが、めぐるましいものだったようで、座った瞬間、気疲れしていたことに気づいた。
    赤城といえば、こういったものには慣れているのか、一筋の変化も見られない。
    かさかさと手提げをいじっていたかと思うと、ぽん、と小さな破裂音がした。何の音かと考えたのも束の間、赤城が急に振り向いたため、どきりとさせられる。
    「食べます?」
    と手には透明な袋。中には色とりどりの飴の包みが入っている。からり、と葡萄の匂いがした。そういえば、朝食を摂ってから何も食べていない。
    「いただこう」
    袋の中から一つ包みを取ると、赤城はまた前を向いてしまった。包みを破り、飴を口に含む。人工的な林檎の味を転がしながら、窓の外を眺める。行き先は、随分山の中に続いているようだ。

    バスに揺られることまた一時間。
    日が随分傾いてから目的地である温泉宿にたどり着いた。温泉街もあるようだが、とてもじゃないが巡る気分ではない。
    中居に案内された部屋に荷物を置くと、ふぅとため息をついた。思ったよりも広い部屋だ。奥に続く戸を開けると、湯気とともに独特な匂いが漂う。
    「あら、露天風呂もついてるんですね」
    戸口で固まった長谷部の横から、赤城が顔を覗かせた。むぐむぐとくぐもった声色だ。振り返ると、着いたばかりだというのにもう饅頭を頬張っている。
    ペロリと唇についた餡を舐める所作にやたらとどぎまぎさせられ、視線の行き場がなくなる自分が情けなかった。
    「それじゃあ、早速お風呂に入りますか。まだお夕飯まで時間がありますし」
    「はぁ!?」
    驚いて赤城を振り返る。彼女はいそいそと棚の中に用意されていた浴衣やタオルを取り出していた。待て、まだ心の準備ができていない。
    「長谷部さんはどうしますか?」
    「い、いや、俺は、その、主への土産を先に選ぼうと」
    「そうですか、それじゃあ途中まで一緒に行きます?」
    「は」
    「大浴場、一階ですよね?」
    壁に頭を打ち付けたい気分である。

    予告された夕食の時刻になり長谷部が部屋に戻ると、彼女はなんと部屋の前で待っていた。それはそうだ、長谷部が鍵を持ったままだったのだから。
    「すまない、待たせてしまったか」
    「いいえ、先ほど戻ったばかりでしたから」
    温泉のせいか頬がやや上気している。硫黄と石鹸の匂いが鼻腔をくすぐった。
    「もうそんなに買ったんですか?」
    卵好きな主のための温泉卵と、何箱もの温泉饅頭を見て目を丸くしていた。

    予め手配した際に言っていたのだろうか。食事は豪華だったのだが、おひつに入った白米が異様な量だった。にも関わらずそれを食い尽くした赤城に仲居も絶句していた。腹はそう膨らんでいるように見えないのだが、相変わらずどこにそんな量が消えているのだろうか。
    食事の後「私も売店、見てきますね」と部屋から出て行ったが、おそらく間食用の菓子類を買いに行ったのだろう。部屋で一人になり、長谷部はようやく浴衣へ着替える。
    やたらと疲れていた。燭台切がいたら「もっと気を抜いてしまっていいのに。夫婦なんだから」と言うだろうし、日本号なら「一杯やりゃあいいんだ、あとはなし崩しだ」と酒瓶を開けるだろう。
    彼らのように自然に振る舞えたらどれだけ楽か。一度、互いに腹を割るどころか切って切られての応酬までしたとはいえ、いかんせんケッコンから再会するまでの間が空きすぎたのだろうか。
    行儀悪くごろりと畳に寝転んだ。他の刀剣たちにはとてもじゃないが見せられない姿だ。
    いつか殺してやる、そう思っていた時は、まだ楽だったのに。


    人の気配で目が覚めた。いつの間にか眠っていたらしい。衣服を直した数秒後、失礼します、と仲居が入ってくる。
    「布団を敷かせていただいてもよろしいですか」
    「ああ、頼む」
    敷布団が二枚、ぴったりとくっついて並べられたことがどうにもむず痒かった。
    仲居が出て行った後も、じりじりとした思いでそれらを見つめていた。どうにもいても立ってもいられない。
    赤城の姿は見えない。また大浴場に行っているのだろうか。そういえばまだ風呂に入っていなかった。さっさと入ってしまおう。
    入浴の用意を持って部屋を出ようとしたが、見ると鍵がそのまま置いてある。そういえば、さっきは長谷部が鍵を持ったままだったから、温泉から戻った赤城を待たせてしまっていた。幸いにも、戻ったばかりだと彼女は言っていたが。今長谷部が温泉に入って行き違いになれば、今度は随分と待たせてしまう可能性もある。
    仕方がない、部屋の露天風呂に入ろう。
    浴衣を脱ぎ、風呂へと続く扉を開け、赤城が振り返るのとほぼ同時に勢いよく閉めた。
    「大浴場に行ったんじゃなかったのか!?」
    扉越しに声を投げる。妙に上ずってしまい舌打ちしたくなる。
    「いえ、あの、だって長谷部さん、寝てらしたから」
    珍しく狼狽したような声が返ってきた。
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