無題「簡単だろ?」
勝利を確信した声音。時々、ほんの時々、この男は学生時代と何ら変わりないような態度をとる。そうして今まで考えてきた事が抜け落ちて、自分の意識が全部嘘のように感じられ、何を考えていたのか、何故考えていたのかわからなくなる。何度も経験した。次こそはと意を決した所で結果は同じだった。二度あることは三度ある、それから四度五度六、七…途中で数えるのをやめた。俺は甘かった。今、ここで行われているこの人道の欠片も無い研究に耐えきれずに、かつての友人に銃口を向けたのも甘さゆえだろうか。引き金に手をかけてもなお引き金を引けず、地に伏しているのも。
「どこを押せばどうなるか。人間の心なんてこいつと同じだ。僕は神の力を手に入れる。皆、道具だ。」
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