初恋を捧げる君へ轟々と燃え盛る炎の中、俺は座り込んでいた。
足はもう使い物にならない。
今から逃げ出しても瓦礫の下敷きになって死ぬのが関の山だろう。
それに俺には逃げ出せない理由がある。
「_りせ」
ふと、彼女の名前を呟いた。
返事の代わりに館の柱が崩れる音が響き渡る。
りせは無事に逃げ出せただろうか。
火傷はしていないだろうか。
りせの足枷の跡はちゃんと消えるだろうか。
頭の中は今も彼女の事でいっぱいだった。
だから正直死ぬ実感なんて未だにわかなかったんだ。
ふと、自分の胸元を触る。
リングチェーンが無くなり空いてしまった胸元が少し寂しかった。
思えば指輪を渡して一生りせを幸せにすると誓ったあの日。
眉を下げてくしゃりと泣き出しそうに笑う彼女に俺まで泣いてしまいそうになったのを今でも覚えている。
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