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    空色クレヨン

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    空色クレヨン

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    初/恋/性/ス/ト/ッ/ク/ホ/ル/ム/症/候/群
    本編ネタバレあり、未通過❌
    りおりせ風味 side璃音
    #りおりせストホル

    初恋を捧げる君へ轟々と燃え盛る炎の中、俺は座り込んでいた。
    足はもう使い物にならない。
    今から逃げ出しても瓦礫の下敷きになって死ぬのが関の山だろう。
    それに俺には逃げ出せない理由がある。
    「_りせ」
    ふと、彼女の名前を呟いた。
    返事の代わりに館の柱が崩れる音が響き渡る。
    りせは無事に逃げ出せただろうか。
    火傷はしていないだろうか。
    りせの足枷の跡はちゃんと消えるだろうか。
    頭の中は今も彼女の事でいっぱいだった。
    だから正直死ぬ実感なんて未だにわかなかったんだ。
    ふと、自分の胸元を触る。
    リングチェーンが無くなり空いてしまった胸元が少し寂しかった。
    思えば指輪を渡して一生りせを幸せにすると誓ったあの日。
    眉を下げてくしゃりと泣き出しそうに笑う彼女に俺まで泣いてしまいそうになったのを今でも覚えている。
    あの日から随分時間が経ってしまった。
    助けたいと願っただけなのに何度も彼女を殺してしまった。
    何度も何度も何度も
    俺が繰り返した数だけりせが死んだ。
    「ごめんなぁ……りせ」
    今更ながらボロボロと涙が溢れた。
    彼女がこの場にいなくて本当に良かった。
    こんな情けない姿見せられないから。
    やっと助けられたんだ。
    何度も繰り返した俺の幕引きが例えこんなに寂しくたって俺はやっと欲しかった結末を手に入れたんだ。

    横にあった机が火の勢いに負けそのまま俺の足に追い打ちをかけるように覆い被さった。
    「っ”……っぅ」
    咄嗟に理解する。
    もうそろそろこの館は崩れるのだと。
    人間っていうのはいざ死を実感すると怖くなるもので、体の震えが止まらなかった。
    死にたくない
    死にたくない
    怖い
    嫌だ痛い
    助けてくれ誰か
    そんな言葉が漏れてしまいそうだった。
    「なありせ……お前もこんなに怖かったのかなぁ」
    潰れてもう感覚のない足を引き摺りベットへと縋る。
    まだほのかに残る彼女の温もりを求めて。
    「りせ……りせ…………」
    もう居ない彼女の名前を何度も呼ぶ。
    親とはぐれた子供のように。

    嗚呼、こんな俺でも許されるなら君とまだ一緒に生きたかった
    君の笑顔を隣でみていたかった
    君に最期に口付けたかった
    でもそんな事が無理だって最初から分かっていたから、俺はあんな呪いじみた言葉を彼女に言ったのだ。
    「………へへ、また初恋を奪って欲しいなんてキザだったかな」
    意識がゆっくりと遠のいて行く。
    きっと俺は死ぬのだろう。

    過去は振り返るな、なんて誰かが言った。
    でも過去に縋るしか方法がない人だって居るんだ。
    それに、こんなに頑張ったんだから少しはご褒美くれたっていいよな。

    「ああ、神様」
    もしいるのならどうか

    今度こそはりせと過去で幸せになれますように

    館の時計が日替りの音を告げた。
    そして、そのまま意識は炎に包まれた。
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