『空腹で飢える頃に』夕方6時頃、ダイヤとレイジの部屋にて。
食卓に突っ伏している2人がいた。
「お腹空いたね~レイジくん~」
空腹を知らせる音がぎゅるるるるるっとレオンのお腹から鳴る。
その直後、後を追うかのようにレイジからもぐるるるるぅぅと鳴った。
「ああ……もうそろそろダイヤ、帰ってくる頃じゃね?」
「せやね~、早くダイヤさんのご飯食べたいなぁ~」
「てめぇはホンッット遠慮ないよな!」
「ええやん~、ダイヤさんも食事はみんなで食べると美味いって言ってたしぃ~」
レオンは溶けたバターのようなふにゃっとした笑顔を浮かべた。
レオンはダイヤからなにか連絡来ていないかとスマートフォンをいじる。
すると1件、新しい通知が来ていた。
「ダイヤさんからだぁ! えぇ?!そうなん?!」
「何、またシンジとイチャイチャしてくるから帰り遅くなるって?」
「そんなん書いてへんけど帰りは遅くなるとは書いてるね……、ってかダイヤさんとシンジくん、ほんまにそういう関係なん?!」
「気づいてないんかーい」
頭上に?!を浮かべて驚いてるレオンに、レイジは逆に驚いてツッコミを入れた。
「普段のアイツら見てりゃ分かるだろ。アレはもうソーユーコトじゃん」
「ん~、確かに最近はいっつもダイヤさんたち一緒におるしなぁ~。だからって付き合ってるとかは違うんじゃないん?」
レオンが首を傾げ、純粋無垢な眼差しを向けてレイジに問う。
レイジの心がほんの少しだけグッと食らうが、レイジはそれに気づかないフリをした。
(そういえば、レオンの前にいる時のダイヤはいつも通りだよな……。
シンジと会う前や会った後のダイヤをあんまり知らないからそう思えてるのか)
レイジは心の中で分析をした。
と、考えたところで晩御飯の時間が遠のいた事実は変わらないし、お腹が空いてる現実もそのままだ。
「レイジくん、瞑想しちゃうん?」
「……」
レイジは机に項垂れたまま動かなくなった。
「よぉーし! 今日はボクがレイジくんたちの晩ご飯作る!!」
「っ?!」
が、レオンの突拍子もない言葉に思わずレイジは顔を上げた。
「何か作れんの?」
「この前ラジオで言ってたチャーハン! レシピ聞いたから作れるんちゃう?」
「作ったことないのかよ……」
「レイジくんも手伝ってな?」
「……」
嫌だ、とレイジは言えなかった。
というのもお腹が空きすぎて早くなにか食べ物を胃袋に入れたいのと、根拠のない自信で行動に移そうとするレオンが心配に思えたからだ。
「鉄のフライパンは勝手に使ったら怒られるだろうから、普通のフライパン使えよ?」
「よっしゃあ! ボクお手製のチャーハン、レイジくんとダイヤさんに食わせたるでぇー!」
やる気に満ちたレオンを横目に、レイジは不安を抱きつつも、2人きりで過ごす時間が少し増えた事に嬉しさを覚え、足取り軽く、だがそれをレオンには悟られないように台所へと向かった。
--その日の夜、ダイヤが帰宅する頃には台所は大惨事となっていた。