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    ねずちゅー

    @nezutyuuusan

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    ねずちゅー

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    自転双子がライラック君と出会うお話。
    自転♀視点

    ライラック君との出会い 本日も天気が良い。
     日向ぼっこに最適な温度、それにそよ風が私を夢にいざなってくる。

    「……ポカポカで気持ちいい」
      
     私は敷布団代わりの草を手で触れる。
     フカフカだ。
     私はその場でクンクンと犬のように周辺の匂いを嗅いでみる。
     風と共にどことなく匂う木の香りが、私の気分を良くする。
     それに今いる場所も、ちょうど直射日光が当たらない木の影でとても涼しくて心地良い。
     森林浴は素晴らしい。
     身も心もリラックスできる。
     
     気分が良くなった私は木の幹を枕にするように、フカフカの草ベットに寝転がった。
     二度寝しようと瞳をゆっくり閉じる……が、頭の中で声が邪魔してきた。

    ――[シャルロット、どこにいるんだ?]

    (おっと)

     私はその場から起き上がる。
     双子の弟シャルドネからの念話だ。
     念話は私達双子同士の会話を可能にすることができる。
     私達だけの特別な能力だ。

    [魔法薬学の補修じゃなかったのか?……さては逃げたな?]

     私達双子は親から引き継いだ血の呪いによって、竜のマレディクタスとなってしまった。
     
     私達は森で産まれた。
     いや……捨てられた。
     両親は分からない。
     もしかしたら竜……かもしれない。
     竜だから故に、毛色の悪い人間が産まれたのを嫌がったのかもしれない。
     人間ではなく、竜だったら私達を育ててくれたのだろうか?
     家族というものが私達にも持てたのだろうか?
     愛というものを知ることができたのだろうか?
     
     だが結局、両親は私達を見捨てた。
     
     
    [……おーい、ルティ?寝てるのか?]

     おっとっと。
     弟が拗ねちゃう。

    [ふふっ、起きてるよルネ]
     
     弟にとって私が大切なように、私にとっても弟は大切で守るべき愛する存在。
     奇跡的に私達双子の絆の力……弟いわく『双子のツガイ』という力のおかげにより血の呪いが抑えられている。
     お互いがお互いを守る関係。
     なので動物もどきのようにいつでも変身したりできる。
     だが、この運命には逆らえない。
     双子のうち片方が欠けると、抑えていた血の呪いが進み出す。
     永久に竜の姿のままとなる。

    [起きているなら返事してくれよな?居留守はなしにしてくれ]

    [えへへっ]

     だから、私は強くなりたい。
     結果的に弟を守ることに繋がるから。
     だからこの学校に来たのだ。
     私はたくさん学んで強くなる。

    [魔法薬学はどうするんだよ?これ以上サボると流石に寮に響くぞ?]

     ……だけど、魔法薬学は別。
     だって、分量とか訳分からない。
     一気に鍋にエイッて入れて混ぜたくなっちゃう。

    [大丈夫。ギャレスにまかした]

     私は自身気に語る。
     
    [は?ギャレスに?どうやっ…………まさかポリジュース薬か?]

    [うん!]

    […………もしそれが今回上手くいったとしてだ、それは一時凌ぎにしかならない……それは分かっているよな?]

    [っうぐ]

     私は痛いところを突かれてドキリとする。

    [自覚があって何よりだよ。そんなことしたって、いずれバレるのだからね。……でも、よくギャレスが了承したな……まぁ、アイツ魔法薬学好きだしな……]

    [それはね……交渉した結果なの]

     弟のお姉ちゃんなんだからそれぐらいできるもん。

    [はぁ?交渉?内容は?詳しく――]

    [――今からやってみる!]

     ギャレスは自信作って言ってた!
     私は手に持った薬瓶の蓋をキュポンと開ける。

    [ちょっとおいルティ待て――]

     私は弟の静止を聞かず勢いよく薬を飲み干した。
     
    (うぇ……苦い……美味しくない)

     感想を聞かせてってギャレスに言われたけど……まず味を変えて欲しいって言おう。
     苦すぎて両目を閉じてしまう。
     
    [……ルティ……ちょっと俺のところに来てくれないか?なんか俺急に縮んで……]

     え?
     私は閉じた目をそーっと開けてみる。
     すると、いつもより視点が低くなっていた。
     
     私はその場から急いで立ち上がって、自身の身体を観察してみる。
     
     手も足も短い。
     まるで3〜4歳児の幼い子供のようになっていた。
     
    (え?嘘!これ縮み薬だったの?!)

     私は慌てだす。

    [ルネ、そっちもなの?!]

    [そっちもってどういうことだよ?!]

     何これ?!
     それになんで私だけじゃなくて双子の弟にも作用するの?!

    […………はぁ……およそ理解した。おそらく姉がなったから連動でっ俺にってことだろうよ。俺ら双子の『絆』がここまで作用するとは思わなかったが……]

     あわわ。
     や、やっちゃった……。

    [おそらく効果はいずれ消えるだろうが……ルティ、俺が迎えに行くからそこで待っててくれ。いいか、そこで待機だからな]

    [わ、分かった!]

     私の返事を終わりにシャルドネとの念話が途切れる。

     途端に私は不安になってきた。
     ずっと弟と話をしてたのに、いざ独りになると寂しくて堪らなくなる。
     自分から独りでフラフラとサボるためここに来たというのに。
     頭の中が寂しい、独りは嫌だ、弟と居たいという気持ちが湯水の如く溢れてくる。
     居心地良かったフカフカの草のことも、枕にちょうどいい木の幹のことも、すべてがだんだん思考から離れていく。

    (も、もしかしたら……精神も幼児化しちゃってきてる?)

     もしそうなら、シャルドネが心配だ。
     弟は私がいないとすぐ泣いちゃうから。
     
     ガサッ。
     
     だ、誰か来る!

     私は咄嗟に竜に変化した。
     だが変身できた姿は小竜の姿だった。

    (な、何これ?!さっきより視界が……低い……)

    「あれ?君迷子?」

     私より大きいのが私に話しかけてきた。
     私は後ろに下がりながら姿勢を低くし、グゥーと唸り威嚇する。

    「うわ〜真っ白い子!ほら〜、こっちおいでー。怖くないよー」

     そいつの正体は、ホグワーツの男子学生だった。
     彼は威圧しないよう低く屈みながら私に手を出してくる。

    (で、でも怖い!)

     グガッ!
     私はそれ以上近付いたら炎のブレスを吐くぞと口を開けて脅す。
     
    「おっと、警戒しているね……食べ物あげたほうがいいかな……」

     チョコレートファッジ……は流石に動物にはダメだよね。
     彼はそう呟きながら自身のバックに手を突っ込む。
     彼がガサゴソとバックから取り出したのは、ごく一般の茶色い餌と林檎の2つだった。

    「今、手持ちこれしかなくてさ……」

     ほんとはお肉とかがいいんだろうなぁー。
     彼はそう呟く。

    (り、林檎だ……食べたい……)

     だが私は彼が右手で持っている林檎に視線が釘付けられた。
     
    「あれ?もしかして林檎に興味ある?」

     彼は私に気遣ってか、私の方にコロコロと林檎を転がしてくれた。
     私はソロソロと警戒しながら近付いてみる。
     
    (罠ではないのかな?)
     
     彼は密猟者みたいに私を捕まえて来ないのかな?
     私はクンクンと匂いを嗅いで、本物の林檎だと確認してから恐る恐るかじってみた。

    (本物の林檎だ!美味しい!)

     私は彼のことが怖いことを忘れるぐらい、美味しい林檎にかじり付く。
     その間に彼が私の近くまでソロリソロリと近付いていることを知らずに。
     
    「君、もしかしてひとりなの?お母さんは?」

     私は首を横に振る。

    「あれ、もしかして僕の言葉分かるの?君って賢いねー」

     彼は優しそうにニコリと微笑んだ。

    「僕はライラックって言うんだ。君は……」

     彼の会話が途中で途切れた。
     私は不思議に思い首を傾げる。

    「……そうだ!君は『ポム』にしよう!ポムはフランス語で林檎っていう意味なんだよ」

     そう言って、彼はソッと私の鼻先に手を近付けてきた。
     私は条件反射でクンクンと彼の匂いを嗅ぐ。

    (ライラックの甘く優しい香りがする)

     彼は私が匂いを嗅ぐのが飽きるまで待ってくれている。
     その後、彼は優しく私の頭を撫でてくれた。
     彼の撫で加減が絶妙だった。
     次第にウトウトと眠くなってくる。

    「あれ?ポムってば眠いのかな?」

     いつの間にか膝上に抱っこされていた私は、本格的にトントンと優しく寝かしつけられていく。
     彼の優しい囁き声をBGMに。
     
    (小さい身体だから眠いのかな……)

     弟を待たなきゃいけないのに……眠気に勝てそうにない。
     ……ちょっとだけ寝ちゃってもいいよね?
     私は考えるのを放棄して夢の世界に飛び込んでいった。



    ――――


    「――――――」

    「――――――」

     誰かと誰かが言い争う声が聞こえる。
     眠いから静かにしてほしいのに。

    「ルティ!」

     ビクッ。
     私は名前が呼ばれたことにより飛び起きた。
     私はあたりをキョロキョロと見渡してみる。
     
     木の近くじゃない……ここはどこ?
     
     ライラックに抱っこされて移動していたみたいだ。

    「ルティ!こっちに来て!」

     小さいシャルドネが私のことを下から大声で叫んで呼んでいる。
     ライラックは困ったようにシャルドネに優しく語りかける。

    「ドラゴンだから火を吹いちゃうんだ。ね?だからちょっと危ないと思――」

    「――ルティはルネのお姉ちゃんだってさっきから言ってるだろ!なんで言うこと聞いてくれないんだよ!」

     シャルドネの大きな瞳からポロポロと雫のように涙が出てきた。

    「お姉ちゃんを返せよ!…………っうぅ、お姉ちゃん…………っうぐ、返してよ……うっうう……うわぁぁぁあーーん!お姉ちゃぁぁー!!」

    「あわわ!落ち着かせたんだけどなぁ」

     よーしよし、ルネは良い子良い子。
     そう言いながらライラックと同じぐらいの背丈の男がシャルドネを優しく抱きしめ、よしよしと撫でていた。
     
     あれは……桃悟君?

     シャルドネもそんな彼に甘えており、えーんと泣きながら抱きついている。
     私はフワリとライラックの腕の中から翼で羽ばたいて離れる。
     
     目指すは弟の腕の中。
     お姉ちゃん、弟のために頑張るよ。

    (幼い翼では羽ばたくのが難しい……)
     
     私はフラフラながらも必死で羽ばたき、見事シャルドネの腕の中に着地することができた。

    「ぅん?ねえちゃあ?」

     私は弟との再会に喜び、スリッとおでこを身体に擦りつける。
     シャルドネは私だと分かった途端、先程とは打って変わってニコニコと笑顔になった。

    「えへっえへへ、ねぇちゃあ!」

    (私も会いたかった!)
     
     私もそう言葉で伝えたかったけど、人じゃないから言葉を発することが難しい。
     もどかしい……。
     エイッ。
     私はと人の姿に戻る。

    「あ、あわわ!シャルロットちゃん?!服着ましょーね!!」

     桃悟君が慌てて杖を振るう。
     私に服を魔法で着させてくれた。

    「……え?ポム……え?」

     ライラック君は私を見ながら何度もパチパチと瞬きをしていた。

    「ルティだって寂しかったんだよ?もうルティを独りにしないでね!」

     私もだいぶ精神が幼く引っ張られているようだ。

    「ルネ約束する!もうルティを独りにしない!ルティといっしょ!」

     私達双子はそう言いながら、再開した感動に震えながら抱きしめ合う。
     そして、2人で手を繋いで駆けっこしたり空を飛んだりと体力が尽きるまで遊びまわった。

     
     ライラック君と桃悟君を放置して……


    ――――

     
     翌日、私がしっかり理解するまでこっぴどく丁寧なお叱りを受けました。
     勿論弟からです。

     私は心に深く刻みました。
     もう二度とギャレスの実験に安易に付き合わないことを。
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