「おはようございます。昨日はありがとうございました。それから、「ん……」
「起きちゃったぁ? まだ真夜中だし、寝てな」
深海の底から引き上げられていくように、ずるずると意識が浮上する。……あつい。身体に籠る熱と纏わりつく汗が不快で身を捩れば、すぐに柔らかなきょうだいの声がして、錨みたく重たい首をそちらに向けた。
頭の下、まだ固い氷たちがカランコロンと音を立てる。眠りに落ちる直前に、この冷たい枕の中身を替えてもらった覚えがあるのだけれど、溶けるより先に僕が起きてしまったのか、再度彼が作り直してくれたのかは分からない。普段は周囲と比較しても正確だと自負している僕の体内時計は、すっかり当てにならなくなっていた。
火照る頬を冷やしながら、ぼう、と涼しげな合唱に耳を傾けていれば、不意にフロイドの骨張った手のひらが伸びてきて、僕の目元を覆い隠した。ひんやりしていて心地が良い。
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