王子の側近の朝は早い。
ルイは素早く着替えて身なりを整えると、1日の予定を確認してから部屋を出た。王子の護衛や身の回りのお世話を任されているルイは、何かあった際にすぐ駆けつけられるよう特別に隣の部屋を宛てがわれているのだ。夜の間の警備を務める衛兵達に挨拶と交代の声掛けをすると、そっと王子の部屋の扉を開けて中に入る。
子供に与えられるには広すぎる部屋の奥へ進み、カーテンを開いていく。金の装飾が施された緞帳のような赤いカーテンはショーが好きな王子のお気に入りだ。ルイは全てのカーテンを開くと、寝室の中央にある立派な天蓋付きのベッドに近付き、部屋のものと同じデザインのカーテンの中をそっと覗き込む。
最高級の布団の中……ではなく上には、丸まっている王子がいた。頭の上に乗っている枕をそっと避けると、あどけない寝顔が現れる。王子の寝相と可愛らしい寝顔を確認するのはルイの毎日の楽しみの1つだ。王族の他に側近しか直接触れることを許されない柔らかい頬をそっと撫でると、ベッドに陽の光が入るようにカーテンを全開にする。
「むぅ……」
王子が眩しさから逃れるように布団に顔を埋めると、美しい金色の髪が陽の光でキラキラと光る。その髪の間から覗く丸みを帯びたふわふわの耳の付け根を優しく撫でると王子がゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
気持ち良さそうに手に擦り寄ってくる様子はとても可愛らしい上に、丁寧にケアされた毛はずっと触れていたいくらいの極上の触り心地だ。しかしルイの任務は王子を起こすことであるため、名残惜しいがそっと手を遠ざける。すると、王子はもっと撫でてほしいと言わんばかりにルイの手を追って身体を起こした。
「うぅ〜……」
「おはようございます、殿下」
「るい〜、こっちの耳も……」
まだ寝惚けているのか、目が開ききらないままルイの手をぎゅうぎゅうと両手で握ってくる王子の姿に思わず緩んでしまう頬を引き締めると、ルイは王子を抱え上げて耳元に口を寄せて囁く。
「ツカサくん、今日は甘えん坊かな?ずっと抱っこで過ごすかい?」
「……ん〜、うん…………はっ!!だ、ダメだダメだ!おろせー!!」
「フフ、おはようございます、殿下」
(文章はここで途絶えている─やる気が出たら書きます)