足りない尾形は不満を抱えていた。
恋人である杉元はかっこ良くて可愛いし顔も良い。けどセックスが優しいのだ。
そう、優しいんだ。
優しく抱かれ、愛を囁かれてトロトロに溶けるのはとても気持ちいいが、自分で開発しきった尾形は所謂失神セックスを体験してみたかった。
ほぼ毎日杉元に抱かれて性欲は満たしてるはずだが、尾形の好奇心は満たされなかった。
AVの世界は思ったより奥深い。尾形はエロサイトで一歩踏み違って素人のかなりエグいプレイを目撃してしまった故に、もう商業で出されるプレイがどれだけ過激でも人体の極限を試すかの様な趣味で撮ってる人のエグさには敵わなかった。
そして今まで苦しそうに喚いてるAV俳優達の声が気持ち良いから叫んでると悟った、悟ってしまったからには好奇心が止まらなかった。たとえ大半の喘ぎが演技で、AVの内容はあくまでファンタジーだとしても、一回ぐらいは体験してみたいと思ってしまった。
杉元に失神するまで抱かれてみたい。
素で「んおっ」とか「へぁ」とか♡が飛ぶ様な喘ぎ方をしてみたい。
今までのレベルは激しくても「ぁあっ」ぐらいだ。
さてどう杉元にその気にさせるのかが一番の問題だ。
どうしたら杉元も理解してくれるのか....
尾形は考えた
「みんなきっと俺と同じ筈だ」と。
杉元も自分と同じようにあのもはやR18G並みのエグい素人ビデオを見れば、商業AVが可愛く見えるし体験してみたくなる、と。
尾形は無言で杉元にサイトのリンクを送った。
時間は金曜日の午後、在宅ワークで休憩(と言って頭の中はずっとエロい考えしかなかった)しながら杉元にリンクを投げ、通知をオフにして全集中して仕事をこなした。杉元の反応が物凄く気になるが気になればなるほど反応を見た時の快感も大きくなる、そして何よりも仕事を早く終わらせて後腐れなく週末をセックスに使いたかった。そう思えばモチベーションも爆上げでいつもより早く仕事を切り上げた。
残りは出社した杉元が帰ってくるのを待つのみ。
尾形は返信を見るのをグッと堪えてシャワーを浴びて後ろの準備をした。
昼飯を平らげて暫く休憩を取ってた時、尾形からラインが来た、珍しい。
尾形は普段、よっぽどな急用がない限り先にラインを送って来たりしない。会話記録も全て杉元から話を始めて杉元が話を締める。最初は少し寂しかったが、杉元からのラインは大抵すぐ返信してくれるのを見て自分も尾形に愛されているな、と感じてる。
そんな尾形からのラインだ。何かあったのではないかと心配し、杉元は少しひやっとした。
「リンク....なんだろ」
杉元は何のサイトか確認もせずリンクを押した、そして....
モザイクもかかってない開発されきったアナルが脱腸してドアップされてるところを誰かに愛撫されてひくひく震えてる動画が再生された。
ドアップと画面のエグさで杉元はこれが何のどこの部位で何されてるのかを判断するのに丸10秒かかった。
多分誰も杉元の画面を見てなかったであろうが、公の場でこんな映像を見てしまった事に慌てて杉元は素早くページを閉じてスマホを伏せた。
先は一体何が起きたのだろうか。
そんな事して人間はまだ生きてられるのだな、自分も大概不死身だけど。
しかもそれが気持ち良いのか?
いやいやいやいや
それより今のサイト、尾形からだったよな?
間違って白石とかキロランケのチャットを開いたのか?
だとしても、何で?
スマホをもう一度確認する勇気を出せず伏せたままにして、パソコンのラインアプリを開いた。
やはり尾形からだった。
え、何、どういう意味それ?そんなエグいプレイしたいって事....?
尾形は脱腸したいのか???????????
いつもならすぐ返信する杉元でも、今回はかなり戸惑った
30分ぐらい悩んだ後、杉元は恐る恐る返信をした
「体調悪いの?栄養ドリンク買って帰るね」
脳味噌を振り絞って得た結論がこれだった。
その日の仕事は頭に入って来なかった。
もし尾形がそういうプレイをしたいのであればできるだけその後遺症の大変さについて納得させて諦めさせたい。
ど.う.し.て.も、って言うなら付き合ってやるが、その前に全力で阻止したい。
ど。う。し。て。もって言うなら他人に開発されるより俺の手で開発してやる、って他人に触らせるもんか。
医療資格を得てもできるだけ負担負わせずに開発してその後の全ての責任を取ってやる。インパクト強かったが、覚悟は決めてる。
性感開発マスター(?)行きの特等席に乗ってやる!!!
心の準備と仕事の絶不調、そして栄養ドリンクを買う為に寄り道したせいで杉元の帰宅は遅くなった。
「遅い」