花火、電車、初めて。《前編》《逆転律霊》 普段なら乗らない時間帯の電車に乗った新隆は、他人と密着し合う状態でこの電車に乗ったことを後悔していた。
暑いし気持ち悪、最悪。もっと早い時間に乗ればよかったな。
新隆は息を詰めて、握りしめたスマホ画面に目をやる。
《 花火楽しみだな!今から電車乗る! 》
今夜は花火大会が開催されるのだ。
十五歳年上の律を花火大会に誘った新隆は、花火を見ながら律に自分の思いを告げようと計画し、告白するシチュエーションを何度も頭の中で思い描き、そのときめきに胸を高鳴らせていた。この日のために新調した甚平を着込み、新隆は自然と口角が上がった。
律に早く会いたい。
ガタン。電車の揺れに合わせて、新隆は違和感を感じた。
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