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    cameidea

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    記憶が兄にしかない現パロ🍃🍉のSS。

    昔のことは何も知らない夕暮れって俺は苦手だ。

    真っ赤な太陽が発する最後の光が消えていくのを見ながら、ぽつりと弟が言う。理由を訊くと、夜が来る前触れだからと言った。その言葉に俺はそうだな、とだけ答えて考えを巡らせる。

    弟は昔のことを何も知らない。
    夜に鬼となった母親に襲われたことも、その後に夜な夜な鬼を狩る日々を送ったことも。

    それでも昔から夕方になると辺りが暗くなるのを人一倍怖がった。その性格は、身長180を越えた高校生になっても直らない。

    「兄ちゃんは怖くなさそうだよね」と弟は言う。本当は俺だって最初は怖かったのだ。でも、鬼になった母親から家族を守ろうと必死だった。

    鬼狩りとなれば、夜目で足りない分は五感を研ぎ澄まして鬼の居場所を探った。怖いという感覚は鬼との先の見えない戦いのなかで忘れていった。それだけのことだ。

    「怖いって言ってられねえぐらいに、いろいろあったからなァ」

    何?また前世の話?と弟が屈託のない笑顔でこちらを見る。よく知らないけど、前世では兄ちゃんは苦労したんだよね、という口調はいかにも他人事だ。
    弟は昔のことを何も知らない。


    今でも夜を怖がってるように見えないけど、と続ける弟の手を取る。もうすっかり大人らしく骨ばった手は温かい。

    「怖いなら、手を繋いで帰ってやろうか?」
    もう17歳になった弟の頬が、安心したというように緩む。
    空はみるみる暗くなっていくけれど、手を繋いでいれば弟が怖がることはない。

    一番星と三日月のきれいな空の下を2人で並んで歩く。
    弟は昔のことを何も知らない。
    でも、俺はそれでいいと思う。
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