耳かき「魈、少し頼みたいことがあるのだが」
「はい、どのようなことでしょうか……」
例えばこれが、魔神戦争の真っ只中であれば、何の疑問も抱くことはなく魔神や妖魔討伐の命だと思っただろう。
「お前は目が良かったな」
「はい……」
しかし、事実上契約関係が終わった今となっては、妖魔討伐を自ら進んですることはあっても鍾離から頼まれることはほぼない。だから、何を頼まれるのか予想がつかず、一歩後ずさってしまう。
「……耳かきをしてもらえないだろうか」
「……み、みみ、かき……ですか」
なんだそれは。少しにこやかに言った鍾離は手には、筆よりも細い棒状のものが握られていた。
「毛繕いのようなものと捉えてもらって構わない」
「……はぁ……」
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