海と日差しとキミの水着と照りつける日差しに肌に撫でつける熱風。
眼前にはエメラルドグリーンが広がっており、辺りには楽しそうな笑い声が散らばっていた。
紛うことなき真夏の海である。
観光地特有の和気あいあいとした雰囲気の中、日光を照り返して熱くなった砂の上で、一人パラソルに隠れる影があった。
「……どうしようかしら〜」
亜麻色の髪を靡かせ、敷き布の上に座っているのは、メルセデスだった。先程まではアネットやイングリットの姿が見えていたものの、今はその影もない。
遠くから何人かの笑い声が聞こえてきて、メルセデスはもう一度肩を落とした。折角の海を前にしているのに、一人では楽しめることも少ない。
(……それに)
先程から、妙な視線を感じる。
女性客が一人で退屈そうにしている姿は、観光地の真ん中では目立つのだろう。背後から、横から、肩をすくめても逃れられない威圧感があった。
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