タイを締めると流石に息苦しさを自覚する。今話題のブライダル撮影。ŹOOĻの4人での特集が組まれたのも、話題性のあるグループというのも理由の一つだろうけれど、新しいチーフマネージャーの売り込みの賜物だろうということも容易に察しがついた。
用意された衣装に内心驚いてしまったけれど、作為的なものは感じられなかったので、本当に偶然だったのだと思う。変な居心地の悪さも気の所為にして、無事に撮影が終わればどこか安堵する自分に言い表し難い感情が渦を巻いた。
雑誌掲載後のメンバーの反応は三者三様だった。一瞬固まって、それから言葉を探して、無難な感想、明らかな話題変換、黙りこくったままの人。気を遣わなくたって、然程気になどしないのに。そんなに今回の衣装はあの人の面影に似ていたんだろうかと考えて、そう考えに至ることこそが答えじゃないかと、帰宅したばかりの部屋でため息にも似た笑いを零したところで、待ってましたとばかりにスマートフォンが震える。
画面に表示される名前に何を期待したのか、タップする指が微かに震えた。
「はい」
「棗ちゃん? お疲れさん、俺だけど」
耳に響く特徴的な声に静かに目を伏せた。土足とは言わない加減で人の心の敷居を跨ぐこの人は、なかなかどうして、私の中の僅かな隙間の空いたタイミングでやってくるのだろう。
とはいっても、用もないのにわざわざ電話までするような人ではない。
「うちのマネージャーが失礼しなかったかなって」
「あぁ、とても丁寧な対応をして頂けましたよ。私がうさぎが苦手ということを知りながら、何度もスタンプを送ってくださるので、本当にペット想いな方なんですね」
「ごめんなー、あの子自分が可愛いと思うもんに関しては火加減強めなんだわ」
「ふふ、冗談です。資料とかも頂いて本当に助かりました。今度改めてお礼を言わせていただきますね」
「雑誌はご覧になられたんですか?」
「ああ、見たよ。綺麗なところで撮ったんだな」
「桜さん、みたいだと」
「言われたの? 誰に?」
「直接ではないですが、気を遣われたというか……」
「二階堂さんは」
「二階堂さんは、何も思わなかったんですか?」
「いや、だって、全然似てないだろ。何も知らない俺が言うのもなんだけど」
「俺が知るあの人なんて、言い方悪いけど病人の姿だけじゃん。結婚のイメージとは遠いっつーか、浮かびもしなかったわ。あ、似合ってたけどな??」
「棗? 怒った?」
「いえ、……ふふっ」
「な、棗?」
「あっはは、そう、そうなんですよ。衣装見た時、私っびっくりしたんです。でも、着てみたらほんと、鏡には私しか映っていなくて……全然似てないなって、ふふっ」
「はあ……それなのに、雑誌が上がって、狗丸さんも亥清さんも御堂さんも固まるもんだから、おかしくって。私、そんなにまだ引きずっているっように見えますかね」
「棗、そっち行くか?」
「……っ」
「もう、おやすみになられてたんじゃないんですか」
「んや、台本チェックしてたからさ、一息入れたかったところだし」