いちばん星が落ちてきて まんまと絆されてしまったなあ。
長く煙を吐いて、ぼんやりと空を見上げる。星が瞬いていたはずの空は、東のはじから白く染められつつあった。もう夜が明けるのかと、勘右衛門はあっという間に過ぎ去った夜に思いを馳せた。一人暮らしを始めて数年、慣れ親しんだアパートの一室の、小さなベランダでのことだ。
手すり壁に背を預けてしゃがみこみ、傍らに置いた灰皿代わりの古い貯金箱――いつだったか五百円玉を貯めていたのを開けてしまった――に、短くなった煙草を押し付ける。下半身に残る鈍痛を見て見ぬふりしたいのに、しかしそれもままならない。ここは勘右衛門の家で、自身のベッドは家主ではない男に我が物顔で占領されていた。
「どうしたもんかなあ」
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