円環 カルサー谷の忘れ去られた聖域――何重にも重なった台地の頂きに近いところにイーガ団のアジトの入り口はあった。
筆頭幹部であるスッパは今日も今日とて仕事に勤しんでいた。今日は団内の武器庫、食糧庫などの倉庫の一斉点検の日であった。厄災復活のため尽力し始めて以来、物の出入りは激しくなり点検も一筋縄ではいかなかった。スッパはその指揮をとるため各倉庫へ赴き、指示を仰がれれば命令を下し、監督を務めていた。
団内は忙しなく、通路も団員の往来が激しい。最後に医務室にやってくればこちらも薬や器具の点検を行う団員たちで溢れていた。その中に言葉通り、異色の人物がいた。赤い装束を皆が纏い、とくに医務を司る者たちは白い羽織をしている中、その人物は裾の長い紫衣を纏っていた。
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