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    はねみな

    ( ╮╯╭)<ほどよく

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    はねみな

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    🐉🔥
    またもだもだしてる

    好きすぎてうそみたい「きみが好きなのはぼくじゃないよ」
     オレの好きな人は優しい笑顔で残酷なことを言う。
     何度伝えても、何度本気だと訴えても、この人の返事は変わらない。
     違うよ。
     ぼくじゃない。
     ちゃんと見ないと。
     優しい声で、優しい言葉で、オレの全部を否定する。
     何も違わない。オレが好きなのは今オレの目の前にいるこの人――カブさんで、オレはちゃんと目を見て伝えてるのに、カブさんはオレから目を逸らす。見てないのはカブさんだ。だからオレは意地でも食い下がる。
    「それ、ちゃんとオレの目見て言ってよ」
     肩や腕をつかみたい気持ちを抑え、声だけで訴える。カブさんは逸らした目を動かそうとはしない。
    「カブさん」
     オレを見て。逃げないで。怖いのはわかるよ。だから、だからこそ逃げないでほしい。オレを見てほしい。何にでも真っ直ぐ立ち向かっていくこの人が、オレにだけこんなことをするのが悲しくて、でも少しだけ薄暗い喜びが湧き上がってしまうのは秘密だ。
    「オレが好きなのはカブさんだよ」
     こっち見て。怖くないから。怖くないようにしてあげるから。
    「今までもこれからも、カブさんだけだよ」
    「……うそ」
     小さく首を振って、小さな声で言う。こんな声、初めて聞いた。
    「それは、うそです」
     小さな声ははっきりと否定する。
    「ウソじゃない。あなたにウソなんてつかないよ、オレ」
     手の届く位置にいるのに、やたら遠く感じる。つかめる位置にある肩も腕も遠くて、遠すぎて、オレはそれでも食い下がる。
    「カブさんには、ほんとのことしか言わない」
     だってカブさんには正攻法しか通じない。試合だって最後は必ず火力勝負になるんだから。
    「応えてほしいわけじゃないです。ただ、オレの気持ち、否定しないでほしい」
     カブさんは何も言わない。肩に掛けたバッグのベルトを両手で握りしめ、唇を噛み締めている。
    「もう一回言うね? カブさん、オレ、あなたのこと、」
    「キバナくん」
     遮られ、今日何度目かの告白の言葉が止まる。
    「キバナ、くん」
     ゆっくりと顔が上げられ、いつもより随分頼りない視線がオレを見つめてきた。
    「それは、ぼくに言うべきじゃない」
     懇願するように、祈るように、言わないでくれと言う。どうしてそこまで否定するのだろう。オレだけじゃない、他でもないあなた自身を。
     だってその目は確かに、オレを、
    「オレのことそんなに好き?」
     ひゅ、と息を飲む音が聞こえた。
    「好きすぎて怖い?」
     顔が泣きそうなくらい歪む。
    「これ以上好きになるの怖い?」
     ぐ、と曲がった口は怒っているようにも耐えているようにも見える。
    「わかるよ、オレだって怖いし」
     全部見抜いて言い当てたオレに笑顔を向けられ、カブさんはますます泣きそうな顔になる。
    「カブさんがそうやって逃げれば逃げるほど可愛くてたまんなくて、力尽くで捕まえたくなる自分がめちゃくちゃ怖ぇよ」
     大袈裟に肩を振るわせ、カブさんは耳まで顔を赤くした。うん、そういうとこ、本当に可愛い。
    「ね、そろそろ諦めよ?」
     さっきより少しだけ近くに感じる愛しい人に手を伸ばす。指の背でそっと頬に触れると、揺れる目がわずかに潤んだ。
    「諦めて、オレのこと好きだって言って?」
     頬を撫でていた指で、噛み締めた唇に触れる。
    「怖くないよ」
     促すように、誘うように、惑わすように。すりすりと指で唇を辿り、わずかに開いた口から零れる言葉を待つ。
    「ぼく」
     指に触れる声と吐息があたたかくて愛しい。
    「ぼく、は」
    「うん」
     早く、早く聞かせて。はやる気持ちを抑え、指に吐息を感じながら、待つこと数秒。
    「 」
     声にならない吐息がようやくオレの待っていた言葉を告げ、うう、と呻くカブさんが固く目を閉じて俯いてしまう前に、
    「オレも好き」
     その唇に初めてちゃんと言葉を届けた。

     
    「カブさん、こーゆーのはじめて?」
    「……はじめて、です」
    「じゃあ二回目もその次も次の次もずーっと、オレとして。……ね?」
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