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    はねみな

    ( ╮╯╭)<ほどよく

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    はねみな

    DOODLE🐉🔥
    慣れてない🔥さん
    どきどきする。
    「カブさん」
    逞しい腕がぼくの腰を抱き、優しくて甘い声が少し高い位置から降ってくる。
    「こっち向いて?」
    ね、とおねだりをされ、恐る恐る顔を上げると、優しくて甘い表情が視界に飛び込んできて、また顔を伏せたくなってしまう。
    どきどきする。どうにかなりそうだ。
    「すごい顔してる」
    こつ、と額を当て、ふふ、と笑う。鼻先に吐息が触れ、ぼくの顔はどんどん熱を持ち、多分ほっぺたは真っ赤で、泳ぐ視線はどこを見ていいのかわからない。
    「ごめんね、でも慣れて?」
    腰を抱く腕に力が込められ、ぐい、と引き寄せられる。腰とお腹がぴったりとくっついてしまって、身体はどこもかしこもがちがちで、どうしようどうしようとそればかりがぐるぐると頭の中を回っている。
    どきどきする。おかしくなりそうだ。
    「ちゅーするよ?」
    からかうような口調が飛び出すや否や、ぼくの唇に柔らかいものが触れていて、柔らかさと暖かさとは反対に、ぼくは固く目を閉じる。
    「いや?」
    嫌じゃない。小さく首を振る。
    「よかった」
    目を閉じた向こうで微かに笑った気配がして、もう一度軽く触れられた後、
    「今日はこれだけ」
    そっと身体と腕が離れ 687

    はねみな

    CAN’T MAKE🐉🔥
    ふわふわしてる
    この人は何にもわかっていないし、何にも知らない。自分以外の人のことやポケモンのこと、世の中のことには詳しいのに、自分のことになると本当に何にも知らなくて、わかってなくて、オレはときどき頭を掻きむしりたくなるくらいじたばたしたり、イライラしたり、怒れてしまったり、心配になったりする。
    「どうかしたかい?」
    今だってそうだ。偶然更衣室で二人きりになって(正直オレの方は二人きりになるタイミングを狙っていた)、着替え中のこの人をロッカーとオレで挟むように近寄り、腕でロッカーの扉を押さえ、
    「ね、カブさん」
    色を含んだ声で名前を呼んで、見上げてきたこの人が、きょとんとした顔をするから、少しは察してくれ!と心の中で地団駄を踏む。
    「キバナくん?」
    いーっ、と顔をしかめるオレを心配そうに見上げながら、カブさんは可愛らしく首を傾げる。本人には可愛くしてるつもりなんて微塵もないんだろうけど、オレにはめちゃくちゃ可愛く見える。
    「あー、ええと」
    可愛いと思ってるだけじゃ始まらない。軽く頭を掻き、オレは改めて近い距離にいるカブさんに向き合う。
    「考えてくれました? 前言ったこと」
    回りくどいのはナシだと直球 1785

    はねみな

    DOODLEバディミ / チェズモク
    エンディング後
    とりあえず吐き出したかった
    「チェズレイ、結婚って興味ある?」
    タブレットの向こうから聞こえてきた声に思考が止まった。

    「で、なんなんですかこれは」
    唐突な電話から十数分後、私は居酒屋のテーブル席に着き、向かいにいるモクマさんに精一杯の恨めしげな視線を送っている。走ってきたせいで乱れてしまった髪が気になって仕方ないが、それより先に現状の説明がほしい。モクマさんは私の視線を意にも介さず、
    「いやー、ご夫婦限定! スペシャルメニュー! って書いてあってさあ、この値段でこのボリュームでしかも見てよこれ! ミカグラ近海でしか獲れない貴重なお魚さんなんだよ〜?」
    まさかここでお目にかかれるなんてねえ、と満面の笑みを浮かべ、目の前で煮立っている小さな鍋の食べ頃を今か今かと待ち構えている。
    「お得意のナンパでどうにかしたらよかったでしょう」
    「おじさんの連敗記録知ってるでしょ?」
    知っている。本気で声をかけていないことも知っている。だから私も嫉妬はしないし、呆れもしない。それがこの人の渡世術、この人が傷つかないための生き方なのだ。
    「そろそろいいかな? ささ、食べよ食べよ!」
    ほれ、と手を出され、小鉢を渡す。
    「お腹空いてる 1735

    はねみな

    REHABILI🐉🔥
    ものすごーくとりとめない
    「わ」
    咄嗟に声を飲み込んだが、少し外に出てしまった。試合が終わり、控室に戻ってきたオレの目の前、ロッカーと壁の隅でカブさんが足を投げ出す格好で眠っている。シャワーを浴びて力尽きてしまったのだろう、大きめのベンチコートから出ている足は靴も靴下も履いていない。生乾きの前髪が額を隠していて、寝顔をいつもより少し幼く、穏やかに見せている。半開きの口からは気持ちよさそうな寝息が微かに聞こえてきて、それが聞こえる距離まで近寄り、床にしゃがみこんだオレは、
    「かーわい」
    足を抱え、膝に顎を乗せ、緩む顔を抑えきれない。
    いいのかな、こんな無防備なところ見せて。可愛い寝顔を観察しつつ、ちょっと複雑な気持ちになる。
    オレはカブさんに何度か好意を伝えている。真剣に言って真剣に断られるのが怖いから、何かの折に触れて、
    「カブさんサンキュー! もー大好き!」
    だとか、
    「カブさんってそんな顔するんだ、可愛いね、好きだなあ」
    とか、ちょっと本音を付け加えるだけの伝え方だけど。
    いつも困ったように笑って、はいはい、って返してくれるカブさんは、きっとオレの本気には気づいていない。気づかれてぎくしゃくするのも嫌だから 2297

    はねみな

    DOODLE🐉🔥
    酔っぱらい🔥さん
    ※ちょっと追加しました
    「きばなくん、ぼくと、わかれてくらさい」
    舌っ足らずな声が恐ろしいことを言う。
    「おねがいします、わかれて」
    飲むペースが早いとは思っていた。大丈夫ですかって何度か聞いたけど、いつも通りのふにゃっとした笑顔で大丈夫だよって言うから、それ以上何も言えなかった。すっかり行きつけになったバーを出る頃には足元がおぼつかなくなっていて、やっぱり大丈夫じゃないじゃんって軽口を叩きながら、ふにゃふにゃになってるカブさんに肩を貸して、いつも通りオレの部屋に向かっていたら、
    「わかれて、きばなくん」
    これだ。
    こんなことを言うために早いペースで飲んでたのか。なんで、どうしていきなり。いつも通りだったじゃん。さっきまでいつもと全然何も変わらない笑顔と口調と視線だったのに、オレの部屋にいつも通り明日の朝まで一緒にいるはずだったのになんで。
    「だって、ぼくもうもどれらいよ」
    何処に?
    半泣きになっているカブさんを支え、それでもゆっくり歩きながらオレの方が泣きそうだ。
    「むりらもの、ぜったい、むり」
    だから何が。
    ちょっと怒った声になってしまい、ひく、と息を飲むカブさんに慌てて謝る。
    「ごめんなしゃい、ごめんれ 1901

    はねみな

    DOODLE🐉🔥
    🎄🌟
    人生にはいくつかの分岐点がある。学校を選ぶとき、家族や友達と大喧嘩をしたとき、知らない土地へ旅立つとき、住む場所を決めるとき、新しいことを始めるとき。それから。
    「あ、こ、こんばんは」
    グーゼンデスネ、とどこか上擦る声で言い、ぎこちなく笑う年下の友人――ぼくは友人だと思っている――がエンジンスタジアムの前でぼくを待っていた。
    クリスマスイブだというのに書類仕事や各所への報連相、年明け早々にあるイベントの申し送りやらその他諸々でばたばたと忙しく、家族と過ごすトレーナーのみんなを先に帰して一人で事務仕事をしていたらすっかり遅くなってしまった。ケーキくらい食べたいな、と思っていたけど店も閉まっているだろうし無理かなあと呑気に外に出た途端、思いもかけない声に呼び止められて今に至る。
    多分、きっと、かなり長い時間、寒空の下にいたのだろう。閉館後のスタジアムから漏れるわずかな光に照らされ、端正な顔の真ん中にある高い鼻が赤く冷えているように見える。
    「ちょっと仕事でそこまで来たんで、カブさんいるかなーって思って。ほんと、偶然」
    彼が声を出す度、カモフラージュでかけている眼鏡のレンズが白く曇る。眼鏡も 1991