今日同窓会だから帰りちょっと遅くなる。と言って何度目かの誕生日にあげたジャケットを着て出て行くウィルの姿を見送ったのは3時間前のことだ。
「暇だなぁ……」
うっかり出た呟きが部屋に響いて嫌になる。家事はウィルがいる時に2人で全部片付けてしまったし、個人で触れるモデルガンのコレクションも一通り綺麗にしてしまった。もう家には何もやることがない。
「あー、飯食いに行きがてらドライブでもするか」
また独り言が響く。最近は音楽をかけていてもテレビをつけていても、人が1人いないだけでなんだかひどく寒く感じてしまうから良くない。ひっそりとため息をついてから急いで物を集めて家を出た。
バイクに乗り30分、何が食べたいかなと考えながら適当に走っていたらいつの間にかウィルが同窓会の会場だと言っていたレストランの近くに着いてしまった。
自分の無意識に少しむず痒くなりながら遠巻きに出入り口を見ると、ちょうど団体が出てくるところでやらかしたとヘルメットを被り直す。
(今ここで見つかってしまったら迎えにきたと思われてしまう、まだ間に合うすぐに立ち去れば気付く人もいないはず!)
頼む!と半ば祈るようにエンジンをかけ回れ右をしようとした時、ヘルメットをかぶっているのにもかかわらずバッチリと目があってしまった。
逃亡失敗だ。手錠をかけられる犯人のような気持ちでバイクに跨ったままその場で待機の体勢にうつす。
手短に挨拶を済ませているのが見えてそんなつもりじゃなかったんだよなぁと思い心の中でウィルの同級生たちに謝る。
「アドラー」
「うわっびっくりした……あー、なんか悪い」
いつの間にか隣にいたウィルに驚きつつも先手で謝る。寂しくて会いにきちゃったなんて、キャラでもないしいい大人がすることでもないんだから。
2次会あるだろ行ってこいよとすぐ言えばいいのになぜか口が開かない。そもそもそっちからなんか言え、なんて逆ギレもいいところの感情が芽生えてき始めた時ハンドルに置いていた手に手が重なる。
「俺のこと迎えにきたの?」
お酒でも飲んだのか少し熱い手、赤い顔、溶けそうな瞳。ずるいな、ずっとずるい。そう思いながら、たまたまだよと苦し紛れに逃げを打つ。
するとぐっと影が濃くなっていつの間にか抱きすくめられていた。往来で何してんだ!?と抵抗しようにも力が強いし体勢も悪かった。
「たまたまでも嬉しい」
えへへと締まりのない笑い方をするウィルを間近で感じてわかった。
相当酒を呑んでいる。
ウィルが酒臭い、なんて初めてだ。何があったんだ?と助けを求めるように同窓会の集団を見てみたら女性陣からはきゃあと黄色い声が上がり、男性陣からはしきりに手を合わせて謝罪のポーズをされる。
なにかあったなぁ?とまだ抱きしめてくるウィルを指差しどうしてこうなったと聞いたら、1番近くにいた男が近寄ってきて謝罪の言葉とあらましを聞いて緩んだ頬を引き締めるのに必死になってしまった。