蝶葬とN社最後の異端を貫き、断末魔を聞き届けた後、詰まった息を吐き出す。
……そろそろだ。
異端を貫き、地を舐めさせる事で高揚に浸る事がいつの間にか出来なくなっていた。
今、私の体を、頭を支配しているのは高揚ではなく、疲労感だけだった。
調整をしなければならない。
周囲に誰も居ない事を確認して釘から手を離し、仮面を取ってマスクに手を添えた時だった。
「……、」
視界の端から、1匹の蝶がひらひらと飛び、残骸の一つにとまった。
蝶はその場で羽根を動かしながら、残骸にじっと収まっていた。
ただの蝶かと思い、再びマスクに手を掛けると……
白い蝶の群れが背後から現れて、そこら中の残骸にとまり始めたのを見てまた手を止めた。
この数の蝶の群れは見た事が無い。
1559