××回目のプレゼント「ジェイド、フロイド、お誕生日おめでとうございます」
パーティが一通り片付き、人もまばらになってきたタイミングで改めて本日の主役に声をかける。
片や複数の生徒から情報収集が出来て満足そうな顔をしており、片やパーティに飽きて自室に戻りたそうにしている双子たち。彼らが僕の声を聞けば、その表情は柔らかで煌びやかな物へと変わっていった。
「ありがとうございます、アズール」
「アズールありがとぉ」
「それで?今年は誕生日プレゼントに何をご所望で?」
対価無しに彼らの願いを叶えてやるのは年に一度、この日だけだ。勿論、僕の誕生日には彼らからプレゼントが返ってくるため、実質対価はあるようなものだが。対価が釣り合っていても釣り合っていなくても許容しているのがお互いの誕生日である。
今年は何を強請られるだろうと少し身構えていれば、彼らは僕の隣に立ち、顔が見えるよう少し屈んで、つばの広い帽子を少し持ち上げた。
「あんね、オレアズールにちゅうしてほしい」
「僕も…、アズールからのキスを頂きたいです」
悪戯っ子のような、これから悪巧みでもしようといった雰囲気で近寄られたため、また無茶苦茶なことを考えているのではないかと思ったが、拍子抜けした。なんだ、誕生日プレゼントにキス、って。キスくらいなら普段から…というと少々語弊があるが、特別なときでなくてもしてやっているのに。
「…それだけですか?」
「えぇ、今はそれで」
「そんだけでいーよ、今はね」
含みのある物言いだが、”今は”彼らにキスをしてやればそれで満足らしい。姿勢を屈めてこちらからの接吻を待ち侘びているようで、早く早くと急かされている気分だ。あまり待たせると駄々をこね始めそうなので、ここは深く考えずにプレゼントを贈ってやるのがいいだろう。
「わかりました」
ひとつ頷けば、両側から頬を寄せられる。そこに口付けてほしいという意味だろう。まずは右を向いて、ジェイドの顎に指をかけ、頬に唇を押し当てる。そして左を向き、フロイドの顎に手を添えて、同じように頬に唇を触れさせた。
「これでいいですか?」
「うん、ありがとぉ」
「ありがとうございます」
大層機嫌が良さそうに帽子を被り直す様子に、相変わらずよくわからない奴らだなと首を傾げていると、まだ何か言いたいことがあるのか、二人はその場でそわそわと目配せをしていた。どうやらこちらから尋ねてほしいようだ。ため息をつき、面倒な予感がしながらも双子に問いかける。
「今は…ということは、更に何か願いがあるのでしょう?早く言ってみなさい」
「ふふ、流石アズール。察しが良いですね」
「あはっ…♡オネガイのつづきはねぇ…」
「「ベッドで聞いて?」下さいますか?」
…成程、どうやらまずは二人を着替えさせる必要があるみたいだ。