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    おせろ

    @sk17882541

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    おせろ

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    イベント開催おめでとうございます。季節外れですが賑やかしに。
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    ひまわり「すげぇ……」
    店の仲間たちと、勉強と買い物と観光を兼ねてのドライブで出会った風景に息を呑む。緩やかな丘が延々と続くトスカーナ地方は、小麦やワイン、オリーブなど、イタリア料理に欠かせない食材の産地だ。その丘に見渡す限りの向日葵がこちらを向いて咲き誇っている。
    雲ひとつない夏空の群青と、向日葵の眩い黄金色のコントラストがあまりにも鮮やかだ。

    「なぜか日本人は特に好きなんだよな、ひまわり畑。わざわざ見にくる」
    「大昔に映画がヒットしたからって聞いたぜ。ソフィア・ローレンの」
    古すぎてコジローは知らないだろ、と言われたので素直に頷く。そもそも映画はアクションかホラーばっかり観てるので、新しくてもおそらくわからない。
    「どんな話なんだ?」
    「ソビエトに出征した新婚ほやほやの夫が、終戦後も帰って来なくて、探しに行ったら記憶喪失になってて、現地の可愛い女の子と結婚してんの」
    「つらすぎる!」
    全員が空を仰いだ。ひとりがテーマソングを悲壮感たっぷりに歌い出す。肩を震わせている連中はもう嘆いているのか笑っているのかよくわからない。
    「そうだ、コジロー。ひまわり畑バックにして写真撮ってあげる。記憶喪失になってない証にカオルに送りなさいよ」
    「おお、いいね!」
    部屋に飾ってある写真の『カオル』は、すっかり「コジローの恋人」ということにされている。何度もそういう仲ではないと訂正しているのだけれど、信じてもらえないのだ。ただの友人の写真を眺める時にそんな甘い顔になる男はいない、そもそもただの友人の写真を何枚も部屋に飾らない、と言われて。まあ、もっともな話ではある。薫にとっては自分は幼馴染だが、自分にとっては「ただの友人」とは言えないのだから。
    自信を失くしそうになる時、挫けそうになる時、桜色の髪を風に靡かせた薫の写真を眺めては、もう少し頑張ってみようと思い直す。美味い、とその端正な顔がほころぶのを夢見ている。
    華やかな姿も、生真面目な本質も、実は寂しがりやなところも、スケートをしている時の少年のままのはしゃぎ声も、筆を持つときの凛とした横顔も、全部全部、心を掴んで離さない。特別な相手。
    もし古い映画の登場人物みたいに記憶をなくしても、自分はきっと彼に恋をするだろう。何度でも。

    「撮るよ。コジロー、笑って!」

    花言葉は、『あなただけを見つめる』
    一面の向日葵を背に幼馴染を想って撮られた写真は、やっぱりなんだかだらしなく甘い顔をしていた。
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