この世には、美しい容姿と真っ白な羽を持つ天使が存在する。
街角の小さな酒場。清潔とは言い難い店内には、日銭を抱えた客がひしめき合い、安い飯と安い酒で腹を満たす。酒が入って気の大きくなった客達が騒ぐ中、両手一杯のジョッキを抱えた女が狭い店内を回る。高い位置で結わった髪を大きく揺らしながら、慣れたように客の間を抜け、隅のカウンターに座る二人の男の前へ乱雑にジョッキを置いた。声をかけようと口を開いた男を一瞥するに留め、注文だと呼びつける客の元へスカートの裾を翻して行ってしまった。
出鼻を挫かれた草臥れた装いの髭面の男は、客の間を縫って歩く後ろ姿を舐めるように目で追っていた。布地から覗く足は生白く、ふっくらと柔らかに肉付いている。
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