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    月哉ともえ

    二次創作絵のまとめ場所。
    ストグラの妄想も置いておきます。
    きんぎょ注意報!の葵ちーと葵ちゃんの大人向けもあるので注意ください。

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    月哉ともえ

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    見たことない顔
     
     葵ちー、高校生で付き合っている。
     モブ視点。
     縦書きテスト。

     うちの高校には、美男子で有名な男がいる。
     入学した時から学校中の女子にも騒がれていて、他校、同学年、年上、OB。ありとあらゆる女子が夢中になったと言ってもいい。
     
     そんなやつと学年が上がる時のクラス替えで一緒になり、仲良くなった。
     話してみると非常に面白い男だった。
     竹を割ったような性格していて、スポーツも万能だから破天荒なことも平気でやる。
     
     自分の外見を理解していても、それを鼻にかけたような態度はとらない。
     悪ふざけは率先して行う。
     
     幼馴染みも学校にいるようで、その子と一緒にいるところは割とよく見かけるのだが、彼女……というわけではなさそうだから、狩人と化した女子どもにお声がかかることも多い。
     
     放課後一緒に遊ぶことも多いのだが、今のご時世なのにゲーセンに行かず、身体を動かす遊びが好きらしく、遊び方が非常に健康的だ。
     
     と、言いながらも、ゲーセンに連れて行けば大抵のゲームは平均以上のスコアを当たり前のようにたたき出す。格闘ゲーム、ガンシューティング、リズムゲームなんでもござれ。
     おまえの身体能力はどうなってんだ。
     
     モテることは知っている。
     女子どもが回す噂だと、彼女もいると聞いた。
     
     だが、この噂を俺は信じちゃいなかった。
     彼女がいたら、なんで俺達とあそこまで遊んでいられるんだ。
     彼女に会いに行くってことしないのか!?
     
     なんて毎度毎度思いながら件の男、葵と一緒に帰っている。
     
    「今日、俺は用事があって帰っているけど、葵がこの時間に駅に向かうのって珍しいな」
    「オレだって用事があんだよ」
    「へ~……」
     
     実際、こんな明るい時間に帰ることが珍しい。時々、幼馴染の女の子と一緒に帰ることはあるけれど、最近は俺達と遊んでいることが多いのにな。
     
     沈黙が苦手な俺はふと思っていた疑問をぶつけてみた。
     
    「そう言えば葵、モテる割には女っ気ないよな。彼女欲しいとか思わねーの?」
    「あ? オレ、彼女いるぞ」
    「え!? 本当にいんのかよ!!」
     
     首を後ろに傾げながら、呆れた顔で俺を見る。
     
    「なんだよ、それ」
    「だって、あんな遅くまで俺達と一緒に遊んでいるのに!? いつ彼女と会ってるんだよ」
    「あー……おまえらと遊んだ後」
     
     え。それって結構遅い時間じゃねえか?
     俺達だって二十時前後には解散する。その後になったら、未成年なんだし、家族だって心配しねえのかな。
     
    「親に怒られたりしねーの?」
    「オレの彼女、一人暮らしなんだよ。他にもきんぎょが一匹……」
    「きんぎょ? いや、そうじゃない。羨ましいな! やりたい放題じゃん。……なんだよ、その目」
    「やりたい放題って、別にそういうんじゃねえよ。あいつ、仕事で夜遅いから、それくらいしか会えねえの」
    「仕事!? 年上!?」
    「いや、同い年」
    「じゃあバイトしてんの?」
    「いや、仕事してんの」
    「なんだそれ……」
    「ちょっと色々ある女なんだよ。ほんとめんどくせーったらありゃしねえ」
     
     葵が両手を頭の後ろに添えて、嫌そうな顔をした。
     
    「だぁれがめんどくさいですって!?」
     
     葵の後ろから、えらい形相で睨みつけている、清楚可憐と言う言葉が似合いそうな美人が立っていた。
     ……似合いそうなんだけれど、葵を睨みつける表情が凄くて素直に清楚可憐と言わせないところがまた凄いけれど、とにかくその辺には絶対いない美人だ。
     
     明るい赤紫のヘアバンドに、すらりと長く艶やかな髪。その辺のモデルにも引けを取らないバランスのいい身体つき。何より芸能人顔負けだと思うくらいのとんでもない美人。
     
    「千歳!? なんだよ、おまえ。こんなところまで来て」
     
     驚いた葵が後ろを振り返って美人を確認すると、見たことのない笑顔で前にいる彼女の鼻をつまんだ。
     
    「そんなにオレに会いたかったのかよ」
    「ちょ、ちが……たまたまよ、たまたま!!」
    「どんなたまたまだよ。駅で待ってろってメール送っただろーが」
    「それ以前に!! 約束の時間とっくに過ぎてるのに……って、ちょっと、いい加減離してよ!」
     
     これは……葵の彼女さんかな?
     絶対そうだよな。こんな感情が前面に出ている葵を見たことなかった。
     俺達と遊んでいる時の楽しそうな顔や、幼馴染の子達と一緒にいる時の楽しそうな顔と明らかに違った顔だ。
     
     彼女さんは葵が鼻をつまんでいた手を振り払い、鼻を隠しながら再度葵を睨みつける。
     あー意外。葵、彼女さんには意地が悪いんだなぁ……小学生か。
     そんなこと思っていると、葵はなんとも悪い笑みを浮かべていた。
     
    「照れんなよ」
    「照れてないっ!!」
    「ほんと、千歳はオレのこと好きだなー」
    「な!? ち、違うってば!」
     
     すげえな、葵。
     こんな美人が目の前にいても普通なのか。いや、普通と言うかほんと嬉しそうだなぁ。
     誰だってこんな美人に声かけられれば嬉しいけれど、それより緊張しそうなほどの豪華な美人なのに葵には遠慮がない。
     
     ……しかし、こんな笑顔の葵を、学校の女子どもが見たら大変なことになりそうだな。
     
     涙目で真っ赤になった美人な彼女さんに向かって、臆することなく葵は全力で彼女をからかう。
     大慌てする彼女を見て、さすがに気の毒に思えてきたからちょっと助け舟を出してやることにした。
     
    「葵もだろ?」
    「「は!?」」
     
     二人が一斉に俺を見る。
     
    「だーかーら。葵もさ、相当彼女さんのこと好きじゃね?」
    「は!? オレが!?」
    「なんで納得いかない声出すのよ、あんたは!?」
     
     彼女さんは納得がいかないと言わんばかりに葵の襟元を掴む。
     うわーお。彼女さん、見た目の割には結構おっかねぇんだなー。
     
    「だって、おまえの今の顔、学校の連中に見せたいぜ? そんな顔するんだな、おまえ」
    「……」
     
     すると、今度は彼女さんが葵に意地悪な笑顔をして見上げた。
     
    「なぁに、葵ちゃん。私と一緒にいる時はそんなにはしゃいじゃってるの? 仕方ないわねー、こんな可愛い彼女なんだし」
    「は!? うぬぼれんな!」
    「なによ!」
    「なんだよ!!」
     
     ほほほ、と漫画でよくありそうなお嬢様の笑い方をする彼女さんと、負けじと葵が彼女さんを煽る。
     こうなると、結構二人の世界で俺のこと頭からすっ飛んでんだろうなー。
     
     葵の顔をちらりと見ると、感情が全力に出ていて、言い分は駄々っ子みたいだった。
     まあ、彼女さんも時々ぶっ飛んだことを言っているから、葵の方がまっとうなこと言っているんだけれどな。
     
    「いやいや、二人ともストップ、ストップ。メッチャ目立ってるから」
     
     俺の声にハタッと止まる二人は息ぴったり。お互い何とも言えない顔をしながら視線を逸らした。
     こりゃ結構長く付き合ってんだろうと思わせる。
     
    「じゃあ、葵。邪魔するのも悪いから俺は先に帰るな」
    「おう、またな」
     
     彼女さんは俺に軽く会釈する。背筋が伸びて会釈する姿は凛としていて、その立ち振る舞いは上品な花みたいだった。
     葵って結構やんちゃなイメージなのに、彼女さんがあんな上流階級のお嬢様って感じだとは思わなかったな。
     いや、それでも俺のイメージしたお嬢様とはちょっとイメージが違ったけれどな。
     
     
     
     
     
     翌日の朝、電車を降りて改札を抜けると葵の背中が見えた。
     俺は葵の背中を追って後ろから声をかける。
     
    「はよ、葵」
    「おー」
     
     なんともバツの悪い顔を俺に向けながら気のない返事。
     そりゃそうだよな。葵からしてみては、昨日の姿はあまり見られたくない姿だったんだろうし。
     
    「いやぁ、葵の彼女めっちゃ美人だったなー」
    「そうかぁ?」
    「しっかし、あんなに分かりやすい痴話げんか、初めて見たぜ」
    「うるへーよ」
     
     一歩前を歩いていた葵の歩みが止まる。
     
    「あ、そうだ」
     
     ちらりと肩越しに俺を見る。その雰囲気はピリッとしていた。
     
    「アイツのこと、あまり外に話さないでくんね?」
     
     有無を言わさぬ冷たい視線にいつもと違った低い声。これはこれで知ってる顔だった。
     
     葵と仲良くなり始めた頃、葵のプライベートを引っ掻き回した女子に向けていたものに酷似していた。
     
     ああ、なるほど。
     もしかして、あの時も彼女さんのことを引っ掻き回されたのかな。
     そう言えば、同い年で仕事って言っていたし、あんな見るからにお嬢様って感じの人だから、立場があるのかも。
     
     学校での葵は、名物になるレベルの美男子で、何も知らない女子から見たら王子様みたいなもんだ。
     彼女がいるだけじゃなく、彼女の身元がばれたら特攻かける危ない奴らもいるかもしれない。
     
     そう思うと、こういう牽制で彼女を守っているのかなと思った。
     
    「分かってる。話す気はないよ」
    「サンキュ」
     
     素知らぬ顔で、視線を前に戻して歩みを進める。俺は一つ息をつき、苦笑いをした。
     
     なんだよ、やっぱりスゲー好きじゃん、彼女さんのこと。
     
     
     -了-
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