【天色】 夕立 朝は澄んだ空に水平線には入道雲まで添える上天気だったのに、あれよあれよという間に山間から黒雲が湧き立つ。冷たい突風がひと吹きすれば、バケツをひっくり返したような豪雨が校舎を覆い、すっかり雨に閉じ込められたようだ。さっさと寮に帰りたいけれど、僅かな距離でもパンツの中までびしょ濡れになるのは目に見えている。
まあいいか、帰ってすぐシャワー浴びて、洗濯機回そう。
そう思い直して、昇降口で上履きを仕舞って大きくひと息付いたところで、背後からどすんっと大きな塊に伸し掛かられた。
「悟」
こんなことをするのは、ひとりしかいない。
少ない同級生のひとりにして、生意気なクソガキから昇格というよりは、そこに新たに友だちという肩書が追加された、長身のお坊ちゃんだ。
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