Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    tatatanme_n2n

    @tatatanme_n2n

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 32

    tatatanme_n2n

    ☆quiet follow

    第2部新章のネタバレ。
    あの時のブラッドリーについて話をしたミスラさんについて。ムラッと来たのでこうだったんじゃないかなという妄想SS。

    猛吹雪。変わらぬ日常 ごうごう、ごうごうと何時もと変わらぬ猛吹雪が荒れ狂う。
     弱い魔法使いであれば軽く命を失うであろう暴威の中、ミスラはちょうどよさそうな雪の上に寝転んでいた。
     頭の下で手を組み目を閉じようとしたところで、ふと何か神経に触る音が聞こえた。
     否、予感だろうか。
     確認しようと珍しくも起き上がり(普段なら何があろうと寝ている)、感覚の信じるままに目を向け――そして、ザラリとした、まるで神経をやすりでこそげ落とされるような『不快』を目の当たりにする事になった。
    「……なんですか、アレ」
     ブラッドリーが捕まっている。
     それだけであれば別にいい。負けた者は淘汰される世界だ。とうとうブラッドリーの番が来たというだけ。
     だが、アレは違う。
     魔方陣やら鎖やらで雁字搦めになったブラッドリーが、ボロボロな姿でなおも暴れ抵抗し、吠える。
     それを囲むのはあの忌々しい双子とフィガロ。
     そして――結界に守られた人間たち。
     この不快をなんて表せばいいのか、ミスラは知らない。
     ブラッドリーが叫ぶ声に、鳴り響く鎖の音に、怯える人間を双子がそれらしく微笑んでいなし、フィガロが鎖を締め付ける。それを見て偉そうな人間が笑う。
     ……いますぐにでもあそこに魔法を打ち込めば、きっとスッキリするだろう。こんな不快とはおさらばだ。元の通りに寝ればいい。
     そうすれば。
     だが。
     一瞬、ブラッドリーの目がこちらを向いたような気がした。
     そこらの魔法使いであれば石になっているだろう傷を受け、それでも矜持を欠片も失わない燃える瞳。
    (ブラッドリー)
     きっとアレは、何をされても堕ちないだろう。石にされていないという事は、それよりもおぞましい事をするという意味だとしても。
     少なくとも、北ではそうだ。
     分かっていても。
     ……いつの間にか握りしめていた手を開く。
     なんでもないように、だらりと。
     そうだ、コレはミスラが手出しするような事じゃない。そんな関係ではないのだ。
     もしも自分が同じ立場で手を出されたら、出してきた相手を生涯かけて殺すだろう。

     そういう事だ。

     だから。

     何処かへ連れていかれるブラッドリーを、ミスラは見過ごす。
     それが、北の魔法使いの在り方なのだから。
     飲み込めない不快に苛立ったとしても。
     最後まで見る事なく、再び雪の上に転がり目をつぶる。
     きっと北は少しばかり静かになるのだろう。騒がしいのが一人いなくなるのだから。それがなんともつまらなく感じるから、今度オーエン辺りにちょっかいをかけるのもいいかもしれない。
     オズに戦いを仕掛けるのもいいだろう。
     双子とフィガロとは顔を合わせたいとは思わない。元から会いたいと思う相手ではない。
     

     ……ごうごう、と鳴る吹雪は止まない。
     ミスラの不快も終わらない。
     それでも、これが譲れない事だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works