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    Futaba053Kara

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    Futaba053Kara

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    8/17柳イチwebオンリー『やんなっちゃうほど一途なLOVE』無料配布
    夏のやないちです。

    まるで、直射日光のような。


     
     あぁ、暑くて頭がぼーっとする。

     小さくため息をついて、頭の下に置かれた氷枕に頬を寄せていると、そっとカーテンが開く音がした。

    「イチ、大丈夫…?」

     隙間から様子を伺うように顔を出した柳田は、おれの目が覚めているのを確認して安心したように息を吐いた。

    「あー、うん、まだちょっとくらくらするけど、随分マシになった」

    「よかったぁ、すげぇびっくりしたんだからな…」

    「あはは、ごめん…」

     授業中、熱がこもった教室に耐えきれずに倒れたおれに、辺りは騒然としたらしい。みんなの前で熱中症でぶっ倒れるとか、教室戻るのちょっと恥ずかしいな、なんて思った。

    「…あのさ、イチ、もしかして今日調子悪かった?」

    「えっ、」

    「なんか、朝から様子おかしかったような気がして」

     心底心配しています、といった雰囲気で顔を覗きこまれて返答に困る。じっと見られているのがどうにも居心地が悪くて、氷枕の位置を調整するふりをしてそっと目を逸らした。

    「具合悪かったなら言ってくれればよかったのに」

    「た、大したことないって、たまたま、ちょっと寝不足だっただけだから」

    「…そう?ならいいけど…」

     明らかに少し不満そうに口を尖らせる柳田に、なんだか申し訳ない気持ちになった。折角気遣って貰っているのに、どんな反応を返したらいいのか分からない。

    「っひ、つめたぁ…!?」

     不意にひやりとしたものが頬に触れて肩が跳ねる。思わず声をあげると、視界に青いラベルのペットボトルと悪戯っ子みたいに笑う柳田がうつる。

    「喉乾いてるだろ?さっき買ってきた」

    「あ、ありがと…」

     言われた途端に喉が渇いてきて、大人しくペットボトルを受け取る。貴重な休み時間にわざわざこんな学校の端まで来て、飲み物まで買ってきてくれるなんて、本当、いい奴だな、と思った。おれなんかには、到底もったいないくらい。
     お礼の言葉に迷っているうちに、授業開始五分前を告げるチャイムが少し遠くで聴こえてくる。あ、と声をあげて立ち上がった柳田に、ちょっと名残惜しくなってしまって、そんな子供みたいな自分が恥ずかしくなった。

    「やべ、もう行かないと」

    「っうん、ごめんわざわざ、ありがと、」

    「…じゃ、さいごに、イチが早く元気になるようにおまじない」

     つい、と前髪を持ち上げられて、汗の滲んだおでこにふに、と柔らかいものが触れた。びっくりして固まっているうちに、軽く触れるだけですぐにそれは離れていってしまう。キスされたのだ、と認識する頃にはもう何もかも遅くて。

    「じゃーな、放課後は一緒に帰ろうぜ!」

     バタバタと駆けていく後ろ姿を呆然と見送る。ちらりと見えた首筋が赤く染まっていた気がするのは、おれの都合の良い見間違いかもしれない。
     じわじわと広がる熱をどうにかしたくて、汗をかき始めたペットボトルをおでこにぎゅっと押し当てた。

    「…原因、それなんだけどな…」

     全く、無意識でやっているのなら本当にタチが悪い。ばくばく暴れ出す心臓と、かあっと一気に火照りだす身体を持て余して、大きくため息をついた。

    …こんなに熱かったら、またすぐに倒れてしまいそうだ。




                      おわり
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    Futaba053Kara

    DOODLE7/24からいっちの無配です
    理想の暮らし理想の暮らし

    汗を流して働くというのは、素晴らしい事だ。
    朝日と共に目を覚まし、身支度を整えて各々仕事を始める。食料の殆どを自給自足しているこの村では、その日食べるものを自分達で用意するだけでも大変だ。
    まずは牛を放牧場へ連れ出して、牛小屋の掃除。のんびり草を食んでいる姿を眺めながら欠伸をこぼしていると、村の子供達がすれ違いざまに挨拶してくれる。きゃいきゃいと話しながら農具を持って走っていく姿に、子供なのに偉いよなぁ、なんてぼんやり思った。自分達が小学生の頃なんてちょっとお使い頼まれただけで押し付け合いの大騒ぎだったのに。いや小学生どころかつい最近まで似たような状態だったんだけど。
    一通り牛の世話を終える頃には日も高くなってきて、天気が良いので釣りへ向かう。途中木陰でおそ松兄さんが昼寝していたのをカラ松が狩りへ引きずって行ったのを見かけた。ここ最近魚ばかり食べているからそろそろ鳥でも捕まえてきて欲しいな、なんて思いながら釣り糸を垂らす。ここらの海は波も穏やかで大きな魚があまり居ないせいか、殆ど入れ食い状態で魚が釣れるのだ。まさか暇つぶしのために通っていた釣り堀での経験がこんなところで役に立つとは、人生ってほんとなにが起こるか分からないよね。
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