それは突然のことだった。
いったんステージを終え、アンコールに向けて皆が慌ただしく準備を始める中、突如バターンという大きな物音が舞台袖に響き渡った。
誰もが忙しく動かしていた手を止めて音のする方向を見遣ると、そこにあったのは蹲る人の姿。
冷たい床に座り込み膝を抱えたまま動かない燐音に、スタッフの一人が慌てて駆け寄り額に手を当てる。
「酷い熱…」
思わず呟くスタッフに他のメンバーたちも駆け寄るが、燐音は顔も上げない。どうやら高熱と疲労でふらつき、尻餅をついたまま立ち上がれないようだ。頭を打っていないだけマシではあるものの、人前では常に気を張っている燐音がこうも弱りきった姿を晒すのは余程のことである。
「…アンコールは中止にしましょう」
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