虚偽にも真サンポ・コースキと言う男に関わるに中って、幾つかの注意点があるのをボルダータウンに住んでいる者なら知っている。この男に関わるには一つ、必要な事以外話さない。これは他の話や商売に関わる事以外を話した場合、知らない内に利用されている可能性が高いからだ。だからこそ、彼と関わる時商売以外の話はしてはいけない。2つ金以外の取引をしない。先ずこの男に当たって金以外で取引は殆ど無い事だが、金以外の場合にした場合どんな法外な物を要求されるか分からない、知らない内に頷いた事が何かしらの犯人にされている可能性もある。だから一番注意しなくてはならない所だ。そして3つ、恋をしない。あの男に恋をした者の末路は皆悲惨だ、だからこそ地獄に堕ちたくなければそれだけは避けねば成らない。だからこれは落ちる物だからと、ボルダータウンで誰かから聞いた話は今も穹の中で刻み込まれており、サンポと関わる中で大事な指標として刻まれている。だからこそ、面倒な事になった。その中の一つを穹は破ってしまったのだ。
サンポ・コースキに恋をしては成らないと言う事を。
穹は今日もボルダータウンで任務を終わらせ屋台でかき氷を買い休憩をしていた。高台から壁に寄り掛かり外を眺めながら、口の中の氷が溶けていく感覚が穹は好きだ。鉄骨の暗闇に灯される明かり達が美しく、そしてその幻想的な姿に心を奪われる。だからこそ此処に来るとあの男に会いそうで憂鬱だと穹は思っていた。ボルダータウン全域に根を張らせ、裏社会の深くに潜む男その男に恋をしてから穹はその気持ちを持て余し、丹恒にも大丈夫かと言われる始末だからこそサンポにだけは知られたくなったのだ。
「おやおやこれはこれは穹さん。こんな所で何を?」
思考の海に陥る所中で突然後ろから声が掛かる。サンポだ。
「何か用か?詐欺師」
「こーれは酷い!僕と貴方の関係じゃぁないですかぁ〜!僕の最愛のお得意様♡」
サンポはいつもの笑みで誤魔化す様に言う言葉に穹は益々警戒を深めるのだ。
「お前はろくな事を考えてないからな」
「そ、そんな事ないですよぉ」
穹がニッコリと笑いバットを構えたのに、サンポは慌て茶化すのを辞め本題に入る様に咳払いをした。
「えーンンっ、穹さんに手伝って欲しい任務がありまして…その……」
「また俺を騙すつもりか?」
「今回は本当です!貴方に宝探しを手伝って欲しいのですよ」
「宝探しぃ?」
「はい!宝探し!」
それからサンポは宝の地図を出し、大鉱区の奥にある場所にバツ印のマークがあり、そこに行けば宝がある様だ。
「報酬は」
「5万信用ポイントとその宝です」
穹は指標になっている言葉を思い出したが、気の緩みから大丈夫だろうと思い込み、サンポの依頼を受ける事にした。だからだろう目の前の事に気を取られ、いつもは隙が一つも無い穹が、サンポに見せた隙に彼が緑の瞳をドロリと溶かし闇を深めた瞳で見ていたのに穹は気付けなかった。
大鉱区に行き道中を歩む穹は、何故サンポがこんな依頼をしたのかと考える。宝探しで宝を貰える事に違和感を憶えるも、宝が穹の物に成るなどあの男からの依頼では可笑しい所しかないと考えるも謎は解けない儘場所に付く。
その場所に宝はあり今回は嘘では無いのだと穹は思うと、宝を開ける。中に入っていたなは一つのボロボロのマフラーだった。
「マフラー?」
そのマフラーを手に取る、なんて事の無いマフラー。酷く汚れ解れているがこれが宝の理由を考えても分からない為に早々に諦め、サンポの元へ持って行こうと踵を返そうとして誰かへと当たる。
「見つけてしまいましたか」
そこには悲しそうに悔しそうに、複雑な色を瞳に宿したサンポが立っていた。
「それは僕が幼く貧しい頃にたった一つ持っていたマフラーでして。誰かに貰った物をずっと使っていました。その誰かは覚えて居ないのですが、その温もりに幸福を覚えたのは事実です」
「貴方にも同じ物を感じる」
穹はその言葉の意味が理解出来ないでいた。サンポに幸福を与えられているのが穹なら、何を与えられているのかと思うも浮かばない。けど淡い想いが叶うならと溢れだしてゆくのを穹は止められなかった。
「それはその人から貰った様な慈愛か?」
「いいえ、もっと違う燃えるように湧き上がり、更に飢えるほどの苦しみを味わう物です」
穹はそれを聞いた時、サンポも同じ気持ちなのを知り同時に逃げたくなった。穹はサンポから距離を取ろうとするが腕が掴まれてしまい逃げられないでいる。
「貴方を僕にください。僕から離れて行かず、旅の終着点は僕の所であって欲しいのです。だから最後は僕の元に来てください」
穹の首にリングに通したネックレスが付けられる。穹はそれを冷静に見つめ一言呟いた。
「プロポーズみたいだな」
「みたいじゃなくてプロポーズですよ♡」
「お前が俺を好きとは思えない」
「………僕は貴方を心の底から愛してますよ」
穹はその瞳に渦巻く熱と渇望とそして闇を見た。執着が渦巻くその瞳は、今すぐ穹が欲しいと訴えている。だからこそ穹は抱きつき告げたのだ。
「俺の一晩は高いぞ」
「知ってますとも♡ベロブルクの英雄殿」
「まあ、今晩はタダにしてやる」
「えー!お優しい!このサンポ張り切っちゃいます!」
結局絆された方が負けなのだと、穹は内心呟くとサンポが手を引き歩き出す。今は騙されやろう、そのマフラーが本物でも本物じゃなくても、サンポは穹を欲しているのだから。
その日の夜リベットタウンの一つの空き家では周りの静寂に反し淫靡な声が響き渡った。