うどん食べるだけ今日もお仕事頑張った。今日はお父さんも会食があって夕飯はいらないと言っていたし、今から自分だけのために夕飯の準備をするのは正直面倒くさい。だから、たまには良いよね。そう自分に言い訳しつつ眺めていたうどん屋の看板には、サクサクに揚がった天ぷらの写真が並んでいた。どうやら天ぷらが売りらしいその店舗の前で足を止め、美味しそうな天ぷらが添えられたうどんに想いを馳せる。揚げたての衣が出汁のきいたつゆを吸って、噛んだ瞬間サクッと音を立てながらも口の中にじゅわっと鰹の風味が広がる。エビのプリッとした食感も幸せの1つだ。エビ天だけでなく、かき揚げもかしわ天もちくわ天だってたまらない。それにほっくり甘いさつまいも天だってきっと絶品。あぁ今日は天ぷら全種乗せだって食べられそう。
ふと横を見ると、ミニ丼セットなんていうものもあるが更に炭水化物を追加するのはさすがに罪深い。でも、おにぎり1つくらいなら――
「あれ? 小鳥遊さん?」
すっかり天ぷらの虜になっていた頭の中を現実に引き戻したのは聞き覚えのある声だった。
「十さんっお疲れ様です」
「お疲れ様。こんなとこで会うなんて珍しいね。今からご飯?」
「あ、はい。たまにはおうどんもいいかなぁなんて……」
「そっかぁ。いいね、うどん。俺も食べてこうかな」