乾杯 ぱき、と音がした。指先、腰、首。集中してたから、大きく伸びをすると、身体中が忘れていた呼吸を再開させる。
「百々人」
「なあに」
「関節を鳴らすんじゃない」
実は負荷がかかっているから、とかなんとか、ああ鬱陶しい。真っ白なキャンバスにぶちまけた黄色が目にうるさい。
その唇を塞いでしまえ、と彼に近付いたところで目が覚めた。
「……なんだ、夢か」
絵が描けない夢をよく見る。大抵、真っ白なキャンバスに、何色かを無理やり乗せているのだけど、それは意味をなしていない。びっしょりとかいた汗が気持ち悪くて、ベッドから起き上がる。
頭痛が酷い。薬、あったっけ。コップに水を注ぎながら、マユミくんのことを考えていた。規則正しい彼は、きっと今頃熟睡しているはずだ。
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