勧誘は五年間断ったけど。小学校というのは理不尽の溜まり場だとつくづく感じる。入学して半年、井浦少年はすっかり学校生活というものにうんざりしていた。
学習内容が幼稚なのは言うまでもない。入学して早々、まさか挨拶の練習からやらされるなんて夢にも思わなかった。その次はひらがなと数字、そしてようやく計算らしい学習が始まったとしても、まさか小さな数字の足し算を細かなブロックを使ってやらされるなんて夢にも思わなかった。国語の学習で読まされるのは幼児の読むような平易で中身のない物語ばかり。
三つの頃にはとうに読み書きができていた井浦少年にとって、学習時間はただただ苦痛でしかなかった。
では学習以外の時間が苦痛でなかったかといえばやはりそんなことはない。強制的に教室外に追い出される休み時間。無意味に校庭を走り回って、いったい何が楽しいんだ。だいたい鬼ごっこをしたって井浦少年を捕まえられる相手などおらず、隠れん坊をしたって見つけられる者もいない。逆もまた然りだ。
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