🚬一年前に買った箱をまだ空けられずにいる。それぐらい煙草は吸わないが、今夜は流れるように火を付けていた。やりたくもない仕事を山積みにして、残業ですり減った時間をくだらないことで潰したらまた一日が終わる。先端に火を灯して燃えていく紙をうつくしいと思った。ま、次に会うのは当分先でいい。

🚘都会から離れた地方都市の駅前で、あの子が手を振って待っている。後ろに荷物を置いて、赤い自動車に滑り込む。一緒に行った免許合宿、危なっかしくて運転は任せられないって笑ってたのに。助手席から見る横顔は別人のようにカッコよくなっていた。距離にして 500km、思った以上に遠いみたいだ。

#創作お題スロット 「古今東西/野球/トンボ」古今東西、雨は人類の大敵だ。異常気象ここに極まれりという2021年の夏、甲子園は今日も雨が降っていた。連日の大雨はグラウンドをぬかるみに変え、まともに野球できる状態ではない。雨が上がると、目を見張るトンボ捌きであっという間に水が消えていった。魔術師たちは去り、白帽が大地を駆けた。

ころころ　しまったなあ、と思わず呟いてしまったのは建前じゃない。二人には悪いことをしてしまった。反省している。でも同時に、口元が緩むのも許して欲しい。
　掛け布団の隙間から顔を出して、自分を見上げてくるその様子が愛おしくて。いやそれだけじゃない。二人とも自分の下半身に身体を乗り上げているんだが、その事実がまずかわいい。自分の前で仲良く……実際にはついさっきまで二人とも夢の中だったのだから、本当に仲良くしていたと言えるかどうかは疑問の余地があるとしても……とにかく今のところは喧嘩はせずに布団の中で顔を並べている。その愛しいぬくもり。下半身に伝わってくる。そして寝ぼけ眼で瞼を瞬かせているところも。
　ただしどうにも機嫌が良くない。二人ともだ。