クリスマスのマシロちゃんとアーテル 一年九ヶ月振りの地上。あちこちに薄らと牡丹雪が積もっている。それを目にしてようやく今の季節が冬だと思い知る。
僕が生まれ育った土地は雪が多い地域だった。この街とは景色や雰囲気が大きく違う。この街は日没が早くなっても景色が明るい。
けれど、生まれ育った土地と異なる場所に在っても冬は寒く、寒さは淋しさによく似ている。
「マシロ。手を繋ぐといい」
差し出される掌は革の手袋で覆われている。硬くもないし冷たくもない。
今のアーテルは手袋だけでなくチェスターコートを羽織りハイネックのセーターにスキニーパンツ、足元はショートブーツを履いている。傍目には街を行き交う人間と変わりない。
耳元にイヤーマフまで付けているから彼が自律型戦闘人形だと判る人間はいない。いるわけがない。いるとしたら空の関係者だけだ。
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