「ヒドない!?ほんまヒドい!」
「そんな言うたんなや、向こうさんやって言葉の綾とかあるやん」
「でも言っていい事と悪い事あるやん!?」
「まぁ簓から愛想無くしたら商売上がったりやからな」
「やろ!?それを……」
「簓が媚びとるわけちゃうのはちゃんと分かっとると思うで、芸能人やってのも重々承知やろ、思わずいらん事言ってしもたんちゃう」
「思わずって……そもそも分かっとんのかなぁ、あいつ俺のことヘラヘラしとるだけやと思ってんのちゃうかなぁ…」
「どうやろな」
「……いっぱい頑張ってんのやけどな」
「まぁ芸人の苦労なんて表面上しかそうそう分からんやろ、相手も職種真逆やしな」
「…………」
「分かってて貰いたかったんか?」
「……そっ、んなことは…べつに、無理して分からんでもええけど…」
「……でも、言われたくない事言うんやったらちょっと考えなあかんな」
「………」
「俺かて簓の事馬鹿にされるんは釈然とせえへんし、芸人の苦労も若手の時代やけど分かっとるから、あんまり口出しされんのもな」
「盧笙…」
「うん、よっしゃ簓、俺がガツンと言ったるわ」
「……え″!?」
「おまえ口八丁の喋りで捲し立てるんはええけど気迫がイマイチ足りへんからな、それに左馬刻くんがもし手ぇ上げてきたら絶対負けるやろ、俺やったらきっとタイマン張れるしな」
「いや待て待てそこまでせんでも、ちゅーか左馬刻は俺に手え上げへんし、いや上げたことはあるけども」
「なんやて?」
「あいや男子同士のよくあるやつや!とりあえず座れ盧笙大丈夫やから」
「ほんまか?実はDVとかされてへんか??」
「ないない!!!」
「ちゃんと問題があったら言わなあかんで。とりあえず俺はすぐ殴り込めるようにしとくからな」
「現役ヤクザんとこに殴り込む数学教師とかやばいやろ、有難いけど一生無いと思うわ」
「ならええんやけど…」
「はぁ、もうびっくりしたで…」
「そんでどうすんねん、このまま喧嘩しとくんか?」
「う……でも言われた事は俺の芸人魂が許したない…」
「左馬刻くんが謝ってくるまで待つん?」
「んーーーー」
「謝ってこんかったら別れるんか?」
「え!!!そっそれは…」
「…………」
「…………」
「とりあえず連絡は来てへんの?」
「あ…スマホ見てへんかった」
「どうや?」
「で……電池切れとる」
「はよ電源入れぇ、ほらコード」
「おーきに…でも連絡来てへんかも…」
「来てへんかったら簓から送ったらええやん」
「な、なんて…?」
「そんなん自分で考えろや喋りのプロやろが!」
「だって〜!」
「だって〜ちゃうねん小学生か!!もう俺らみたいにラップバトルせえや」
「た、確かに…あっでも左馬刻に一対一でラップぶつけるんは若干トラウマやから…」
「なんやねん…しゃあないな、簓は左馬刻くんに仕事の事とか自分のスタンス罵倒されたんが嫌やったんやんな?」
「おん…嫌やったから怒ったけど…でも…」
「でもなんや」
「喧嘩したままも嫌や…」
「なんで嫌なん?」
「えっそれは……左馬刻の事が……す……すきやから……」
「もっとハキハキ言えや!!」
「恥ずかしいわ!!!」
「つまり言われた事は嫌やったから怒ってしもたけど左馬刻くんが大好きやから喧嘩したままも嫌や〜とかなんとかそのまま本人にゆったらええねん、完璧や」
「完璧なんか…?もうようわからんくなってきたわ…」
「電源どうや」
「ん、ついた…」
「着信18件やな」
「………で、でも最後から三時間経っとる」
「たった三時間やん、俺風呂入ってくるからその間に連絡すんねんで」
「……が、頑張るわ………」