「電話どやった?」
「今から来るって…」
「来るっていうてもヨコハマからやったら二時間以上かかるし帰りの新幹線無いで、向こうは仕事大丈夫なん」
「自由業やから休みにするって…」
「じゃあええやん、簓も明日まで休みなんやろ、お前んちで仲直りし」
「ちゃんと仲直り出来るんやろか…」
「あっちから来るんやからそりゃ出来るやろ、わざわざ文句垂れにオオサカまでこーへんわ」
「そ、そうやんな、顔見て別れ話とかやないやんな…」
「……そうやって簓が心配しとったからそんなアホな事ないわって言うたってん」
「ほほーう」
「でも一応俺も気になったからシンオオサカまで見送るだけのつもりで行ってん、そしたらこっちに来た左馬刻くん、首とか二の腕とかにキスマークつけとってな」
「おいおいやるねぇ」
「せやからそれ見て俺もキレてもうて『簓が悩んどる間にオドレはなにネーチャンとヨロシクやっとんじゃ市中引き回してどつくぞワレェ!!』ゆうて」
「あれ?盧笙クンって先生だよなァ、ヤクザだったっけ」
「そしたら左馬刻くんも反撃してきてな」
「それ駅構内の話だよな?おいちゃん震えちゃう」
「まぁギリギリで簓が止めたんやけど、俺らも熱うなってたから止まらんくてお互い簓に殴られて終わったわ」
「うへぇどこ殴られたんだ?」
「俺は腹で向こうは顔やな、俺の為に争わんとってェ!!って半泣きで叫んどった」
「ちょっと再現してくれや」
「ええよ」
「俺の為に争わんとってェ!!」
「ちょおま…ミゾオチ入ったやんけ…!」
「オイ簓のヤツ泣いてんじゃねぇか?」
「いや簓自分争わんとってェて言いたかっただけやろ」
「七割はそうやけどマジで二人とも落ち着いてほしい」
「急に真顔になんな」
「七割って結構占めてんじゃねーか…」
「それギャラリー居たんじゃねえの?」
「ああ…遠巻きに囲まれとったけど簓が誤魔化しとったで」
「簓クン苦労してんなァ…」
「しかもなんやちゃんと聞いたらキスマークちゃうくて、簓と喧嘩した後自暴自棄になって森?で落ち込んどる間にえらい虫に刺されたんやって」
「小学生みてぇだな」
「ムヒも携帯しとったしな。それで俺もスマンって謝って二人送り出したっちゅーわけや」
「はは……いやぁこえ〜こえ〜……」
「アイツらなぁ」
「うん?」
「喧嘩した言う割によぉ好いてんのがバレバレでほんま、心配して損したわ」
「そりゃあな、ふーふ喧嘩は犬も食わねえからなぁ」
「ほんまそれやわ。いうてまだ籍入れとらんけどな」
「もう入れんだろ、知らんけど」
「ははっ零もええノリになってきたな」
「スマンかった…!」
「べつにいいわ」
「でもほっぺた腫れてへん?」
「腫れてはねえけど……つーか、殴られてもいいと思ってたし」
「喧嘩の事で殴るつもりは無かってん、ほんまやで」
「わかったわかった」
「その、盧笙とも喧嘩させてしもてスマン…」
「それは別にあの野郎もテメェも悪くねえだろ。簓の事で怒ってくんだからよ、テメェ好かれてんな」
「はは、俺の相方熱い男やねん……ええと、それでなんやっけ…」
「俺が簓の事悪く言ったから、悪かったって話だよ」
「ん…それや」
「……」
「うん?」
「……悪かったよ、言い過ぎた」
「うん、大丈夫やから」
「……いいのか?」
「ええよ。嫌やったけど……でももう言わへんやろ左馬刻は」
「言わねぇ」
「うん、せやからええよ。俺喧嘩してもうても、やっぱり左馬刻の事好きやもん。ずっとおりたいし、おまえと離れとるんが勿体無いから」
「……そうかよ」
「……けどあれやな、なんか恥ずいな、結構ド派手に喧嘩してもーたから」
「? べつに恥ずかしくねーだろ」
「え、そう…? 俺喧嘩して仲直りって恋人とやった事ないから分からんねんな。兄弟もおらんからそういう経験無いし」
「……そうか」
「おん、仲直りの仕方知らへんから…だから左馬刻が来てくれてほんまに嬉しいねん」
「あ? 俺に電話くれたのはおまえだろ、そうじゃなかったら先延ばしになってたかもしんねぇし」
「う……そうやろか?電話俺からかけるんめっちゃ緊張してんけど、やってよかった?」
「当たり前だろダボ、電話なくても頭冷やして会いに行くつもりだったけどよ…つか、俺は喧嘩しても別れる気とか無かったけど言いすぎたのは俺だし簓は愛想尽かしたかと思ったからよ」
「はぁ?そんなん俺やって別れたくない……」
「……」
「なっなんか言えや!!」
「俺は単細胞なんだろ?」
「へ?」
「だから今までおまえに嫌われる事も言ってきたかもしれねぇ」
「俺は嫌いになった事なんてないで……口悪い時はようあるけどな、そんなん今更やし」
「別れる時はおまえが俺に嫌気がさす時だと思ってたからよ」
「……左馬刻」
「……なんだよ」
「…………すまんけど別れたらへん」
「……」
「おまえが他に好きな子出来ひん限り別れてやらん。おまえが人殺したって一緒に埋めたるし、おまえがいつかよぼよぼになったって俺もよぼよぼで隣で笑かせたる」
「……んだそれ」
「往年のギャグのストックも考えとるんやで〜」
「はぁ?気ぃ早え……おまえ」
「ん?」
「……ほんとに芸が好きだよな」
「ん。みんながわろてくれるからな、でも」
「……?」
「おまえが俺の笑いで幸せになってくれたらええなと思うよ」
「……そーかよ」
「そーや」
「……」
「なんや?」
「これ以上幸せになったら怖くなるわ」
「……はは、左馬刻にも怖いもんがあるんか」
「…あ?テメェは、よく知ってんだろ」
「…………せやな」
「……」
「でもな、俺がおまえを守ったるし幸せにもするし、ぎょーさん笑かせたるから、怖がらんと受け取ってや」
「……それ、おまえ」
「うん?」
「出来んのかよ」
「でっ出来るし!簓さんに任せえ!ビックボードにライドオンやで」
「…………」
「待ってくれ、真顔はあかんて」
「そうじゃねえ、それは俺様どうこうじゃなくてテメェの希望だろ」
「へ……?」
「簓のしたい事だろ」
「や、うん……だって、俺出来へんかったやん……守れへんかったし傷付けてもうた、から」
「…から?」
「…………」
「俺にしてほしいことあんじゃねえの」
「左馬刻に…?」
「なぁ簓、守ってくれんだったらもう俺様はテメェを離せねえしテメェは俺様んとこ以外もうどこにも行けねえぞ、それで良いんだったら俺にもしてほしいこと言えや」
「えっえっと…」
「俺が簓にやれなかった事あんだろうが」
「………そ、れは」
「言えよ」
「………」
「………」
「………離せないんやったら、絶対離さんとって」
「……」
「……俺がおまえを嫌いや言うても、俺が離れて行こうとしても…もう二度と離さんでくれ」