無題気付いてしまった。出来ることならば、気付きたくはなかった。
あまりにも無慈悲なその目線の行き先に。
今、私と会話をしているはずなのに。なんでそんな顔で、なんでそんな目で。………嫌なヤツだ。なんて感情を持ってしまっているのだろう。違う、こんなのは私じゃない。
「面影、聞いてるのか?」
「あ、あぁ…もちろん聞いてるよ」
聞いてはいる。その声が私に向いているのだから聞かない訳が無い。でも君は私を見ていないじゃないか。君こそ本当に私の話を聞いているの?
「向こうが気になる?」
「え?いや別に…」
嘘だ、気になるくせに。モヤモヤした気持ちが募る。
「私との話は後でも出来るし、向こうに混ざってきてもいいんだよ」
ここで自分を優先してくれるか、なんて彼を試すことも、あの目線に気づかなければ絶対にしなかった。気づいてしまった私が全て悪い。何故こっちを見てくれていないの。
819