「……軍師」
「ん。どうしたの」
「いい加減、自室へ戻られたらどうです」
「だって一氏くんの部屋、書庫から近いんだもの」
「軍師、」
「あと少し……」
「あいつ、来ますよ」
「えっ」
半兵衛は慌てて身を起こして身だしなみを整える。途端に足音が聞こえて障子に影が落ちた。
「失礼する。一氏、先輩はこちらにいるか?」
「あぁ」
「う、うん!いるよ」
「よかった……失礼します」
見計らったように官兵衛が部屋を訪れる
「どうしたの、官兵衛」
「少しお聞きしたいことがありまして」
「僕でよければ。何かな」
「はい、この書のこの記述なのですが」
すぐに二人の世界に入る様子を見つめてる一氏。
先程までの寛ぎきった様子から襟をただしてしゃんとした様子の半兵衛の姿を見て、その切り替えの速さと落差に思わず笑ってしまい、口元を押さえる。
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