いつかアナタの味になる 水風船を割ったように、“帳”が解けた。
「お二人とも、お疲れさまでした」
帳の外では伊地知さんが迎えてくれた。
「お疲れさまっす」
「お待たせしました」
「お怪我もないようでよかったです」
車に乗り込むと気にしないようにしていた疲労がじわりと広がっていく気がした。足が重い。もう今日はなんもしたくない。
「今日の呪霊は逃げ足が速かったですが、それだけでしたからね」
「強くなかったのはいいけどさー。俺、あちこち走り回ってさすがに疲れたわ~」
「いい走りっぷりでしたよ」
「ていうか、ナナミン俺のこと囮にしてたよね?」
「……してませんよ?」
「いや何その間!」
ふふ、と伊地知さんが笑う声が聞こえた。
「ねぇ~ひどくない伊地知さん?」
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