手のひらの上で乱舞を若気の至りだった。
そうでなければコンクリートブロックで頭を殴ってきた相手と、セックスなんてしない。
連絡先も知らない奴が自分のセーラー服のリボンを解いていく手を、ただ黙って受け入れたりなんてしない。純情を捧げたなんて言葉だけはロマンティックなあの行為を、思い出にして許したりなんてしない。
――ないだらけの関係だった。
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あ、と間抜けな音が薄い唇から零れ落ちた。と同時に目の前の男が吐き出した白い息は、ネオン瞬く明るい夜空に昇って、跡形もなく消えていく。
数年ぶりに相見えた灰谷蘭は長かった髪をバッサリと切って、当時よりいっそう危うげな雰囲気を纏っている。というのに、三ツ谷が真っ先に抱いたのは『マフラー似合ってねェな』なんて場違いとも言える感想だった。
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