偶像 ある暑い日の夜。寝所に設置してあった空冷機が故障をしてしまい、仕方なく小さな扇風機で夜をやり過ごそうとしていた時だった。
いくら暑いとはいえ、日々の疲れが溜まったこの体は睡眠を欲していて、気が付けば俺は夢の世界にいた。
それが夢だと分かった理由は、そこには親父がいたからだ。すぐにこれは夢だと自覚した。だけど、否定はしなかった。ライブをする親父の姿を久しぶりに見て、なんだか胸が締め付けられるように痛くて、熱かった。
カタギの奴らに親父は笑顔を振りまく。その中に俺も混じっていて、親父に笑顔を向けられて、俺は嬉しくて、寂しくて、泣いた。すると泣いている俺を見た親父は俺に向かって手を差し伸べて、一言『笑って』と言った。
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