2.予兆 雨の気配は家を出るころに急に濃くなった。遠くで雷鳴が響いている。遠くの空はわかりやすく鉛色で、ああもうすぐ一雨来るぞ、と思う。家から店までは自転車で二十分と少し。雨が先か、店に着くのが早いか、迷う時間も惜しく自転車に跨った。店に着く頃には空は今にも泣き出しそうな様相で、厚い雲の隙間からたまに雨粒が落ちてきて、リョータのシャツにぽつぽつと染みを作っていた。それでも濡れたうちには入らない。自転車を停めて、思わず勝ったぜ、と呟いた。
そのままコンビニに足を向けた。仕事前になにか腹に入れるものを買うためだが、コンビニに行くという行為が半ば習慣みたいになっていて、なんとなく行かないと落ち着かなくなっている。買うものはたいてい決まっている。おにぎり、具は鮭。ミニバスをしていたころ、コーチが疲労回復にいいからおにぎりの具は鮭にしろと言ったことがあって、それからなんとなく手が伸びる。こんなものでたまった疲労がなんとかなるとは思えないし、おにぎりの中のひとかけらの鮭にそんな大役を負わせることはないだろうと思いつつ、それでもやっぱり手が伸びる。それから野菜ジュース。こっちは不規則生活のせめてもの良心といったところだ。今日はビタミンプラスと書いてあるものを選んだ。
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