淡雪に紅
❆❆❆
ざわざわと、話し声が大きくなる。紅や紺の着物を身に纏った同い年の女性たちが、頬を綻ばせながら飽きもせずおしゃべりをしている。積もる話もあるのだろう。化粧が濃ゆく髪の毛も盛り盛りで、僕には誰が誰かの区別は付かなかった。
窓ガラスの向こうでは牡丹雪がひらひらと舞っていて、今夜は積もりそうだ。吐く息も白い。僕は冷たいガラスに身を預けながら、顔を見られないように俯きがちに式が始まるのを待っていた。というのは、端的に言えば恰好が恥ずかしかったからだ。
「成人式くらいは目立ちなさい」との母からのお達しで、僕は袴を着ていた。しかし大体の男はスーツを着るのが定番だった。袴を着ている人もいるにはいるが、真っ赤な羽織を合わせた田舎によく居るヤンキーだった。自分は地味な色の袴で、その人達とも一線を画していた。
5150