高龍(逆)書きかけ R15くらいその姿の坂本に出会ったのは、召喚されて数日後のことだった。
金色の瞳を見て、一目で生前の彼ではないと理解した。色が違ったからではない、目に宿る光が鈍く澱んでいたからだ。
生前の自由奔放な海原のような姿は影もなく、触れれば崩れていきそうな、砂の様に乾いた雰囲気を身に纏っていた。
だからこそ手を出せたのかもしれないなと、シーツに寝転んだまま、藍色のシャツに隠されていく背中を見つめていた。
高杉重工のビルには夜遅くまで仕事をすることが多いだろうからと寝泊まりが出来る様にペントハウスを作っていた。
まさか男を抱くための部屋になるとは思わなかったが、キングサイズのベッドにしておいてよかったななどと思いながら身支度を整える龍馬の姿を見つめていると、冷ややかな視線がこちらに向けられた。
「そんなに見つめられると背中に穴が開きそうだな」
「君はいつも夜明け前に帰ってしまうから一人寝が寂しくてね」
「何を白々しいことを」
刺々しい言葉に目を細める。実際彼の言うとおりで、情も何もなければ、快楽も伴わない、生産性のない行為だった。
「何、今夜で最後のつもりだったからさ」
器は坂本龍馬だが、中身は得体の知れない混ざりものだ。出会った時点で既にほとんど擦り切れて消えかけていた彼の欠片が、今夜消えたことを褥で知った。
そこで彼への興味が完全に切れてしまった。
「そいつは有難いね、こんな突飛なことはもう勘弁願いたいよ。じゃあまた連絡をする」
不機嫌そうに眉を顰めると、坂本の姿をしたそれは自動ドアの向こうへ消えていった。
同盟を盾にしたとは言え、よく身体を明け渡したものだ。自分ではなく坂本龍馬の体だから知ったことではないということか。
「あーあ、つまらないな」
一人になった部屋に響いた声は低く冷めていた。
窓の外をぼんやりと眺める。ビルの下には橙色の光が星の様にチラチラと揺れている。
あと少しで悲願が達成すると言うのに、どうしてこんなにもつまらないのだろうか。