一、髪(思慕) 小竜の金髪は本丸の中でも艶やかな色をしている。言い得れば、滑るように落ち着いた金だ。大包平は見るたびにその髪に見惚れる。
「だから、やめてよ、大包平。」
大包平は、さっきから、その髪を櫛で梳いている。そんなに綺麗な髪をしているのに、彼の髪はいつも不揃いで、その上、それを結って、ピンで固定している。髪が長いのにもったいないと、常日頃、思っていた。小竜の部屋で、彼が髪を下ろしているのを機会に大包平は、ほぼ無理やり小竜の髪を梳かしている。櫛どおりはいい。下ろしていない方が不思議なくらいだ。
「なぜ、こんな美しいのに、下ろさん。」
大包平の物言いは、いつも思ったことをそのまま言う。
「それは、さっきも言っただろう。大般若みたいな髪質じゃないから、下ろすと邪魔なんだよ。」
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